【解説】プランターで野菜が育たない?原因と対策、簡単な野菜選び

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「プランターで野菜が育たない」という悩みを抱えていませんか。野菜初心者でも手軽に始められるのがプランター栽培の魅力ですが、いざ育ててみると「育たない原因は何だろう?」と壁にぶつかることが多いものです。もしかしたら、手間を省くために行った土の使い回しが裏目に出ているのかもしれませんし、良かれと思って買った培養土だけでも、野菜が育つ全ての期間を支える栄養は含まれていないかもしれません。

また、「苗に水やりしすぎるとどうなるか」をご存じでしょうか。大切に育てるあまり、かえって根を傷めているケースも非常に多いのです。水の過不足は、生育不良を引き起こす大きな原因となります。ほかにも、浅いプランターで野菜を育てる場合の特有の注意点や、そもそもプランターに向いている野菜は何かを知ることも、成功への近道です。この記事では、限られたスペースである小さいプランターで育てられる野菜の紹介から、できるだけ手間のかからない「ほったらかしでも育てやすい野菜は何か」、そして小さいプランターで簡単な栽培方法まで、あなたの「育たない」という悩みを解決する具体的なヒントを詳しく解説していきます。

この記事で分かること

  • プランターで野菜が育たない主な原因
  • 水やりや肥料、土に関する注意点
  • 初心者でも育てやすい野菜の選び方
  • 小さいプランターで栽培するコツ
目次

プランターで野菜が育たない主な原因

  • 育たない原因は何?5つの要因
  • 苗に水やりしすぎるとどうなる?
  • 土の使い回しによる連作障害
  • 培養土だけでは肥料が不足
  • 浅いプランターで野菜を育てる注意点

育たない原因は何?5つの要因

プランターで野菜がうまく育たない時、その原因は一つとは限りません。多くの場合、基本的な栽培環境のどこかに問題が潜んでいます。しかし、原因さえ特定できれば、対策を講じることで見違えるように元気を取り戻すことも可能です。

主な原因として、以下の5つの要因が挙げられます。ご自身の栽培環境と照らし合わせてみてください。

  1. 日当たり不足: 野菜の成長に不可欠なのが「光合成」です。多くの野菜は十分な日光を必要とします。日照時間が不足すると、植物は光を求めて茎だけが弱々しく間延びしてしまう「徒長(とちょう)」という状態になります。結果として、株全体が軟弱になり、花が咲かなかったり、実がつきにくくなったりします。
  2. 水やりの過不足: プランターは土の量が限られているため、地面での栽培(露地栽培)に比べて非常に乾燥しやすいのが特徴です。一方で、「土を乾かしてはいけない」という思い込みから水をやりすぎると、土が常に過湿状態になります。これにより根が呼吸できず腐ってしまう「根腐れ」を引き起こします。
  3. 肥料の不適切な管理: 野菜も人間と同じで、成長のためには栄養(肥料)が必要です。市販の培養土に含まれる初期肥料だけでは、特に長期間収穫する野菜の栄養を賄うことはできません。かといって、一度に大量の肥料を与えたり、濃すぎる液体肥料を与えたりすると、根がダメージを受ける「肥料焼け」を起こし、逆効果になります。
  4. 土壌の問題: 前年に使用した土をそのまま使い回すと、土の粒子が崩れて水はけが悪くなっていたり、特定の栄養素だけが枯渇していたりします。また、後述する「連作障害」を引き起こす病原菌や害虫の温床になっている可能性も高いです。
  5. 密集させすぎ(株間の不足): 小さなプランターに苗をたくさん植えすぎると、根が十分に張るスペースを奪い合い、「根詰まり」を起こします。また、地上部でも葉が過剰に茂ることで風通しが悪化し、湿気がこもりやすくなります。これは、カビが原因の病気(うどんこ病など)や害虫が発生する絶好の環境を作ってしまいます。

これらの原因を一つひとつ確認し、プランターの置き場所を変えて日当たりを確保したり、水やりや肥料の管理方法を見直したりすることで、生育環境は大きく改善されるはずです。

補足:日陰に強い野菜も

ご自宅のベランダがどうしても日当たりが悪い場合でも、諦める必要はありません。野菜の中には、強い直射日光を必要としない「半日陰」を好むものもあります。例えば、ミツバ、ワケギ、シソ、ミョウガなどは、比較的少ない光でも育ちやすい野菜です。

苗に水やりしすぎるとどうなる?

プランター栽培で初心者が陥りがちな最大の失敗が、愛情の裏返しとも言える「水のやりすぎ」による「根腐れ」です。

「野菜を元気に育てたい」「枯らしたくない」という思いから、つい土の表面が乾く前に水を与えてしまうことがありますが、これは植物にとって非常に危険な行為です。プランターの土が常にジメジメと湿った状態が続くと、土の粒子間の空気が水で満たされ、土中に酸素が不足します。野菜の根も生きており、呼吸によって酸素を取り込んで活動しているため、酸素が足りなくなると呼吸困難に陥り、やがて細胞が壊死し、腐ってしまうのです。

根が腐ってしまうと、当然ながら水分や土の中の栄養素を吸収できなくなります。その結果、地上部の葉は、まるで水不足の時のように元気がなくなり、しおれてきます。

危険なサインの見分け方

葉がしおれている時、それが「水不足」なのか「根腐れ」なのかを見極めることが重要です。

  • 土を触ってカラカラに乾いていれば水不足です。すぐにたっぷり水を与えてください。
  • 土を触ってジメジメと湿っていれば根腐れ(水のやりすぎ)の可能性が濃厚です。この状態でさらに水を与えると、とどめを刺すことになります。

根腐れが疑われる場合は、すぐに水やりを中断し、日当たりと風通しの良い場所に移動させ、土が乾くのを待つ必要があります。

プランター栽培での水やりは、機械的に「毎日あげる」と決めるのではなく、必ず土の状態を指で触って確認する習慣をつけることが何よりも大切です。

水やりの基本ルール

水やりの絶対的な基本は、「土の表面が乾いていたら、プランターの底の穴から水が流れ出るまでたっぷりと与える」ことです。この「メリハリ」が重要です。中途半端に少しだけ水を与えると、土の表面しか湿らず、根が深く伸びなくなってしまいます。

  • 与える時:底から流れ出るほどたっぷりと。(土の中の古い空気やガスを押し出す効果もあります)
  • 控える時:土の表面がまだ湿っているうちは、控える勇気を持つ。

特に気温が低く水が蒸発しにくい冬場は、水やりの頻度は夏場よりもずっと少なくなります(例:数日に1回など)。季節や天候に応じて柔軟に対応しましょう。

土の使い回しによる連作障害

一度野菜を育てたプランターの土を、消毒や再生処理をせずにそのまま次の栽培に使い回すことは、絶対に避けるべきです。その最大の理由は、「連作障害」を引き起こす危険性が非常に高いためです。

連作障害とは、同じ科の野菜(例えば、トマトの後にピーマンやナスなど)を同じ土で連続して栽培することで発生する、深刻な生育不良のことです。畑(露地栽培)で特に問題視されますが、土の量が限られるプランターでは、より深刻な影響が短期間で現れます。

主な原因は2つあります。

  1. 土壌の栄養バランスの極端な偏り: 野菜は種類ごとに、好んで吸収する栄養素が異なります。例えば、葉を育てる野菜(葉菜類)は「チッソ」を多く消費し、実をつける野菜(果菜類)は「リンサン」や「カリ」を多く消費します。同じ科の野菜を連続で育てると、土の中の特定の栄養素だけが枯渇し、次に植えた野菜がその栄養素を吸えずに育たなくなります。
  2. 特定の病原菌や害虫の増加(土壌病害): これが最も深刻な問題です。その野菜(や同じ科の野菜)だけを攻撃する特定の病原菌(カビやウイルス)や害虫(センチュウなど)が土の中に住み着き、繁殖してしまいます。栄養バランスと違って目に見えないため対策が難しく、一度発生するとその土は汚染された状態になります。(出典:農林水産省「連作障害とは何ですか。」

例えば、前年にトマト(ナス科)を育てたプランターの土には、ナス科特有の病原菌が残っている可能性が高いです。その土で翌年に同じナス科のピーマンやナス、ジャガイモを育てると、病原菌の格好の餌食となり、病気にかかりやすくなってしまいます。

注意:土の再生は非常に手間がかかる

プランターの土を再利用(再生)する方法も存在します。しかし、それには相応の手間と知識が必要です。

【一般的な土の再生手順】

  1. 古い根やゴミ、石などをふるいにかけて丁寧に取り除く。
  2. 黒いビニール袋などに入れ、真夏の直射日光に当てて「熱消毒」する。(数週間)
  3. 消毒後、石灰(苦土石灰など)を混ぜて酸度(pH)を中和・調整する。
  4. 腐葉土や堆肥などの「土壌改良材」を混ぜ込み、土のふかふかさ(団粒構造)を復活させる。
  5. 新しい元肥(もとごえ)を混ぜ込み、栄養を補給する。

これだけの作業を正確に行うのは、野菜初心者の方にとってはかなりの重労働です。失敗のリスクを考えれば、毎回新しい「野菜用培養土」に入れ替えるのが、最も確実で簡単な成功への近道と言えます。

培養土だけでは肥料が不足

「連作障害を避けるため、毎回ちゃんと市販の新しい野菜用培養土を使っているのに育たない」という場合、その原因は生育の途中での「肥料不足(肥料切れ)」である可能性が非常に高いです。

市販されている培養土の多くには、植え付け時の苗の成長を助ける「元肥(もとごえ)」と呼ばれる初期肥料が、あらかじめバランス良く配合されています。しかし、この元肥の効果は永続的ではありません。製品にもよりますが、その効果は植え付けから約1ヶ月程度で切れてしまうことが一般的です。

特にミニトマト、ナス、キュウリ、ピーマンのように、夏から秋にかけて長期間にわたって次々と実をつけ続ける野菜(果菜類)は、大量の栄養を継続的に必要とします。元肥が切れた後、適切な栄養補給(追肥)を行わないと、途中でスタミナ切れを起こし、成長が止まったり、花が咲かなくなったり、実のつきが極端に悪くなったりするのです。

元肥(もとごえ)と追肥(ついひ)

野菜栽培で使う肥料は、与えるタイミングと役割によって、大きく2種類に分けられます。

  • 元肥(もとごえ): 植え付け時にあらかじめ土に混ぜておく、スタートダッシュのための肥料。
  • 追肥(ついひ): 野菜の成長に合わせて、生育の途中で不足する栄養素を追加で与える肥料。

プランター栽培では、土の量が限られ、水やりによって肥料成分が流れ出しやすいため、この「追肥」が非常に重要になります。野菜の種類や生育状況(葉の色が薄くなってきた、など)を見ながら、適切なタイミングで追肥を行う必要があります。(参考:ハイポネックスジャパン株式会社「肥料に関するよくあるご質問」

追肥のタイミングと方法

タイミング: 一般的に、苗を植え付けてから2〜3週間後、または最初の実がなり始めた頃からスタートします。その後は、野菜の成長具合を見ながら、10日〜2週間に1回程度の頻度で追肥を続けるのが目安です。

方法(肥料の種類):

  • 液体肥料(液肥): 水で薄めて水やりの代わりに与えます。即効性が高く、すぐに効果が現れますが、持続性はありません。こまめな管理が必要です。
  • 固形肥料(化成肥料など): プランターの縁に沿ってパラパラとまき、軽く土と混ぜます(根に直接触れないように注意)。雨や水やりでゆっくり溶け出し、効果が長く(約1〜2ヶ月)持続します。

初心者の方は、まず「2週間に1回、固形の化成肥料を与える」とルール化し、元気がない時に追加で「液体肥料」を与えると管理しやすいでしょう。

ただし、前述の通り、肥料も与えすぎは禁物です。特に日当たりが悪い場所で肥料を与えすぎると、植物が吸収しきれず、土の中の肥料濃度が異常に高くなり、根の水分が逆に奪われて枯れてしまう「肥料焼け」を起こすことがあります。必ず製品に記載されている適量を守ることが大切です。

浅いプランターで野菜を育てる注意点

野菜が育たない物理的な原因として、プランターの「深さ(容量)」が足りていないケースも非常に多く見られます。

野菜は、地上部が大きく育つほど、その体を支え、必要な水分や栄養を吸収するために、地下の根も同様に深く、広く張る必要があります。特にミニトマト、キュウリ、ナス、ピーマンなどの実をたくさんつける野菜(果菜類)や、ニンジンやダイコンなどの根を食べる野菜(根菜類)は、根を深く伸ばす性質を持っています。

もし、デザインや手軽さだけで浅いプランター(例:深さ15cm程度)にこれらの野菜を植えてしまうと、根はプランターの底で行き場を失い、それ以上伸びることができなくなります(根詰まり)。根が張れる範囲が狭いということは、吸収できる水分や栄養の絶対量も少ないということです。結果として、株全体が大きく育たず、水切れも起こしやすくなり、期待したほどの収穫は到底望めなくなってしまいます。

プランターを選ぶ際は、「大は小を兼ねる」と考え、育てる野菜がどれくらい根を張るのかを事前に調べ、必ず余裕のあるサイズ(特に「深さ」)を選ぶことが、プランター栽培成功のための絶対条件です。

育てる野菜の種類に応じて、最低限必要とされるプランターの深さの目安は異なります。以下の表を参考にしてください。

野菜のタイプ 代表的な野菜 必要な深さの目安 特徴
根が浅い野菜 ベビーリーフ、ラディッシュ、葉ネギ 10cm 〜 15cm程度 非常に浅いプランターでも育てられる。
葉物野菜 リーフレタス、小松菜、水菜、シソ、バジル 15cm 〜 20cm程度 標準的なプランターで十分育てられる。
実をつける野菜(果菜類) ミニトマト、ナス、ピーマン、キュウリ、オクラ 30cm以上(深型) 根が深く張るため、必ず深型のプランターを選ぶ。
根を食べる野菜(根菜類) ニンジン(ミニ品種)、ダイコン(ミニ品種) 30cm 〜 40cm程度 根が伸びる長さ+αの深さが必要。

補足:排水性を高める「鉢底石」も忘れずに

プランターのサイズと合わせて、非常に重要なのが「排水性」です。どれだけ深いプランターを使っても、底の水はけが悪いと土が常に湿った状態になり、根腐れを起こします。

これを防ぐため、プランターに土を入れる前に、必ず底に「鉢底石(はちぞこいし)」を敷き詰めてください(ネット入りのものが後片付けに便利です)。鉢底石が排水層の役割を果たし、余分な水がスムーズに底の穴から排出されるようになり、根腐れの防止に絶大な効果があります。

プランターで野菜が育たない時の対策

  • プランターに向いている野菜は?
  • 野菜初心者が失敗しない選び方
  • ほったらかしでも育てやすい野菜は?
  • 小さいプランターで育てられる野菜
  • 小さいプランターで簡単な野菜栽培
  • プランターで野菜が育たない悩みを解決

プランターに向いている野菜は?

プランター栽培を成功させるためには、限られた環境でも育ちやすい野菜を選ぶことが重要です。すべての野菜がプランター栽培に適しているわけではありません。

一般的に、プランター栽培に向いているのは、比較的根を浅く張る野菜や、生育期間が短く小型の野菜、または株全体があまり大きくならない野菜です。これらの野菜は、限られた土の量とスペースでも生育しやすく、初心者の方にも管理が容易です。

プランター栽培に向いている野菜の例

  • 葉物野菜: リーフレタス、小松菜、水菜、ほうれん草、シュンギクなど。これらは根が比較的浅く、標準的なプランター(深さ15〜20cm)で十分に育てられます。
  • ハーブ類: シソ(大葉)、バジル、パセリ、ミント、ルッコラなど。生育旺盛で、必要な分だけ収穫できるため非常に実用的です。
  • 一部の根菜類: ラディッシュ(二十日大根)や、ミニニンジン、ミニダイコンなど、プランター栽培向けに品種改良された小型の品種。
  • 一部の果菜類: ミニトマト、ピーマン、ししとう、ナスなど。これらは収穫量も期待できますが、前述の通り必ず深型(深さ30cm以上)のプランターと、株を支える「支柱」が必要です。

逆に、スイカやカボチャのようにツルが地面を這って広範囲(数メートル四方)に広がる野菜や、ゴボウや長ネギのように地中深くに育つ野菜は、家庭用のプランターで栽培するのは難易度が非常に高いため、初心者の方にはおすすめできません。

野菜初心者が失敗しない選び方

野菜初心者がプランター栽培で最初の壁を乗り越え、楽しみを見出すためには、「育てやすさ」と「収穫までの早さ」を最優先して野菜を選ぶことを強くおすすめします。

最初の栽培で「自分で育てた野菜を収穫し、食べる」という「成功体験」を積むことが、その後の継続的なモチベーションに繋がります。逆に、最初から難易度の高い野菜に挑戦して失敗すると、「やっぱり自分には向いていない」と家庭菜園自体をやめてしまうことにもなりかねません。

初めてのプランター栽培であれば、まずは種まきから収穫までが圧倒的に早い「葉物野菜」や「小型の根菜類」から挑戦し、栽培のリズムを掴むのが最善の策です。

特に初心者におすすめの「失敗しにくい」野菜は以下の通りです。

  1. ラディッシュ(二十日大根): 最大の魅力は収穫までの早さです。名前の通り、種まきから約20日〜30日で収穫できるため、すぐに成果が目に見えます。小さいプランターでも育てられます。
  2. 小松菜: 暑さや寒さに比較的強く、病害虫の被害も少ないため、真夏と真冬を除けばほぼ一年中栽培できます。生育期間も種まきから約1〜2ヶ月と短いのが特徴です。
  3. リーフレタス(サニーレタスなど): 結球しない(丸まらない)タイプのレタスです。株ごと収穫する必要がなく、外側の葉から必要な分だけ摘み取って収穫できるため、長期間にわたって楽しめます。
  4. シソ(大葉): 半日陰でも育ちやすく、非常に丈夫でほとんど手間がかかりません。「種から」ではなく「苗から」育てれば、ほぼ確実に夏の間中、薬味として活躍してくれます。

また、春先にトマトやナスの「苗」を購入する場合は、健康的な苗を選ぶことも失敗しないための重要なポイントです。葉の色が濃く、茎が徒長せず太くがっしりしており、根がポットの底から白く少し見えている苗が、良い苗の証です。

ほったらかしでも育てやすい野菜は?

「家庭菜園はやりたいけれど、毎日のこまめな管理は自信がない」という方も多いでしょう。「ほったらかし」と聞くと、水やりも肥料も一切不要なイメージがあるかもしれません。しかし、残念ながらプランター栽培において、「完全に放置」して育つ野菜は存在しません

なぜなら、プランターは地植え(露地栽培)と決定的に異なり、蓄えられる水分量と栄養分が限られているからです。地植えならば地中深くから水分を吸い上げることができますが、プランターは人間が水を与えなければ、雨が降らない限り必ず枯れてしまいます。

ただし、その中でも比較的「管理が楽」で「生命力が強い」野菜は確かに存在します。最低限の水やりさえ忘れなければ、元気に育ってくれる可能性が高い野菜たちです。

比較的管理が楽な(ほったらかしに近い)野菜

  • ニラ: 「多年草(たねんそう)」の代表格です。多年草とは、一度植えると冬越しして何年も育ち続ける植物のことです。株がしっかりと育てば、年に何度も収穫できます。刈り取った後に追肥をするだけで、また新しい葉が生えてくるため、コストパフォーマンスも抜群です。
  • シソ(大葉): 非常に丈夫で、適応力が高く、半日陰でも元気に育ちます。生育旺盛で、夏場は次々と葉をつけます。一度育てると、こぼれた種で翌年プランターから勝手に生えてくることもあるほど生命力が強いです。
  • ミョウガ: 強い日差しを嫌い、日陰や湿気を好むため、日当たりが悪いベランダでも育てやすい稀有な野菜です。土の乾燥にさえ気をつければ(夏場は特に注意)、夏から秋にかけて独特の香りが楽しめる「花みょうが」が収穫できます。
  • パセリ: 独特の強い香りが害虫を寄せ付けにくく、半日陰でも育ちます。必要な分だけ外側の葉から摘み取って使えるため、一度植えておくと長く重宝します。

注意:「ほったらかし」でも乾燥には絶対に注意

これらの野菜は丈夫ですが、プランター栽培である以上、土の「乾燥」だけは最大の敵です。特に夏場、数日間水やりを忘れると、いくら丈夫な野菜でも枯れてしまいます。土の表面が乾いていたら水やりをする、という最低限のルールは守るようにしましょう。

小さいプランターで育てられる野菜

「ベランダのスペースが限られている」「大きなプランターを置く場所がない」という場合でも、小さいプランター(深さ15cm程度の標準的なサイズ)で育てられる野菜はたくさんあります。

小さいプランターで育てる場合は、根を浅く張るタイプの野菜を選ぶのが絶対条件です。深い根を必要としない野菜であれば、限られたスペースでも十分に生育可能です。

小さいプランター向きの野菜リスト

  • ハーブ類: バジル、パセリ、ミント、ルッコラ、コリアンダー(パクチー)など。
  • 葉ネギ(万能ネギ): 根元を少し残して収穫すれば、再生して何度も収穫できます。
  • ベビーリーフ: 様々な野菜の若葉。種まきから収穫までが早いです。
  • ラディッシュ(二十日大根): 小型で収穫が早い根菜の代表格です。
  • シソ(大葉): 1〜2株あれば家庭で使う分には十分です。
  • ミツバ: 半日陰でも育つため、置き場所を選びません。

中でも「葉ネギ」は、スーパーマーケットで買ってきた根付きのものを、根元から5cmほど残してカットし、その根の部分を土に植えておくだけでも再生する「再生栽培(リボベジ)」が可能です。これは最も手軽な家庭菜園の一つと言えるでしょう。

ただし、小さいプランターは土の総量が少ないため、利点(手軽さ)と欠点(土が乾きやすい)が表裏一体です。蓄えられる水分量が少ないため、特に夏場は、朝に水を与えても夕方にはカラカラになってしまうことも珍しくありません。状況によっては朝夕2回の水やりが必要になる場合もあるため、土の乾き具合をこまめにチェックする習慣をつけてください。

小さいプランターで簡単な野菜栽培

小さいプランターで、かつ最も簡単に栽培をスタートしたい方に、自信を持っておすすめできるのが「ベビーリーフ」「ラディッシュ」の2つです。

これらの野菜は、栽培に必要なスペースが小さい(深さ10〜15cmでOK)だけでなく、種まきから収穫までの期間が非常に短いため、「育てる楽しさ」と「収穫する喜び」をすぐに実感できます。

ベビーリーフの簡単栽培(すじまき)

ベビーリーフとは、レタスや水菜、ほうれん草、ルッコラなど、様々な野菜の若い葉(新芽)のことです。市販の「ベビーリーフミックス」などの種を使えば、一度にカラフルな若葉を育てられ、サラダなどに最適です。

  1. プランターに培養土を入れ、表面を平らにならします。
  2. 指や細い棒で、深さ1cm弱の浅い溝を数本つけます(これを「すじまき」と言います)。
  3. 溝に沿って、種同士がなるべく重ならないように注意しながらパラパラとまきます。
  4. 種が隠れる程度に、ごく薄く土をかぶせ、手のひらで優しく押さえます。
  5. 霧吹きやジョウロの優しい水流で、土が流れないようにたっぷりと水を与えます。
  6. 発芽して葉が混み合ってきたら、生育の悪いものや密集しているものを抜き取ります(これを「間引き」と言います)。間引くことで風通しが良くなり、残った株が大きく育ちます。
  7. 草丈が10cm〜15cm程度になったら、株元からハミでカットして収穫します。間引いた葉もサラダなどにして食べられます。

ベビーリーフは品種にもよりますが、種まきから約3週間〜1ヶ月という短期間で収穫を始められるのが最大の魅力です。

「ラディッシュ」も簡単でおすすめ

前述のラディッシュ(二十日大根)も、小さいプランターで簡単に育てられます。ベビーリーフと同様に「すじまき」で種をまき、成長に合わせて2〜3回間引きを行って、最終的に株と株の間隔(株間)が5cm程度になるようにするのがコツです。

間引きを怠ると、葉ばかりが茂って肝心の実(根)が太らないため注意が必要ですが、そこさえクリアすれば、種まきから約20日〜30日で、赤く丸い実が収穫できます。お子さんと一緒に「土の中の宝探し」のように収穫するのにも最適です。

プランターで野菜が育たない悩みを解決

この記事では、プランターで野菜が育たない代表的な原因と、それを解決するための具体的な対策、そして初心者でも失敗しにくい野菜の選び方について詳しく解説しました。

プランター栽培は手軽ですが、地面とは異なる特有の難しさがあります。しかし、その「なぜ」を理解し、適切な対策を講じれば、誰でも新鮮な野菜を収穫する喜びを味わうことができます。最後に、プランター栽培を成功させるための重要なポイントをまとめます。

  • プランターで野菜が育たない主な原因は「日当たり」「水」「肥料」「土」「密集」
  • 野菜の多くは日光が必要だが、日陰に強いミツバやシソもある
  • 水のやりすぎは「根腐れ」の原因になる
  • 水やりは「土の表面が乾いたら、底から水が出るまで」が基本
  • 土の使い回しは「連作障害」のリスクがある
  • 初心者は毎回新しい培養土を使うのが確実
  • 市販の培養土も「追肥」が必要
  • 元肥は約1ヶ月で効果が切れる
  • 追肥は10日〜2週間に1回が目安
  • 肥料のやりすぎは「肥料焼け」を起こすので注意
  • 野菜に合った「プランターの深さ」を選ぶことが重要
  • ミニトマトやナスなどの果菜類には深さ30cm以上が必要
  • 初心者はラディッシュや小松菜など、育てやすく収穫が早い野菜がおすすめ
  • ほったらかしで育つ野菜はないが、ニラやミョウガは管理が比較的楽
  • 小さいプランターでは葉ネギやベビーリーフが育てやすい
  • 小さいプランターは土が乾燥しやすいため水やりに注意する
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