こんにちは。今日も田んぼと畑から、運営者の「あつし」です。
田んぼで作業をしていると、いろんなカエルに出会いますよね。「今見た緑のカエルはアマガエルかな?」「茶色いカエルもいるけど、あれはアカガエルだろうか?」と、田んぼで見かけるカエルの種類について気になったことはありませんか。
ダルマガエルみたいに、最近は見かけなくなった種類もいますし、カエルって触っても大丈夫なのか、毒があるのか心配になったり、特徴的な鳴き声の主を知りたくなったりもしますよね。最近では、昔と比べてカエルが減った理由を心配する声も聞かれます。
この記事では、日本の田んぼでよく見かけるカエルの種類や、混同しやすいカエルの簡単な見分け方、彼らの生態について、私自身の観察経験も交えながら、わかりやすくまとめていきますね。
- 田んぼでよく見るカエルの種類と特徴
- 混同しやすいカエルの簡単な見分け方
- カエルの毒性や触る際の注意点
- カエルが減っている理由と田んぼ環境
田んぼで見かけるカエルの種類と特徴
日本の田んぼは、実はお米を作るだけでなく、たくさんの生き物のすみかにもなっています。特にカエルは、田んぼの生態系を代表する存在と言ってもいいかもしれませんね。
まずは、私の田んぼでもよく見かける、代表的なカエルの種類とその特徴を紹介します。それぞれの個性や見分け方を知ると、田んぼでの出会いがもっと楽しくなりますよ。
定番のニホンアマガエル

日本のカエルとして一番おなじみかもしれません、ニホンアマガエルです。田んぼに行けば、まず間違いなく出会えるカエルかなと思います。
体長は2~4.5cmくらいと小さめで、指先に丸い吸盤が発達しているのが特徴です。この吸盤のおかげで、稲の葉っぱや畦(あぜ)の草はもちろん、時には家の網戸や窓ガラスにも器用に張り付いていますよね。
最大の特徴は、周りの色に合わせて体の色を鮮やかな緑色から灰色、褐色へと変化させられることです。これは皮膚にある色素細胞を伸び縮みさせて色を変えているそうで、まさに自然界の忍者ですよね。平地から山地までどこにでもいて、田んぼや畑、人家周辺など、多様な環境にうまく適応しています。
繁殖期や雨が降る前になると、「ゲッ、ゲッ、ゲッ」とか「クワッ、クワッ」と、体は小さいのに驚くほど大きな声で鳴くので、存在感があります。オスは喉の下にある鳴嚢(めいのう)という袋を膨らませて鳴きます。
泡で産卵するシュレーゲルアオガエル

ニホンアマガエルと本当によく混同されるのが、このシュレーゲルアオガエルです。どちらも鮮やかな緑色をしていますからね。
体長は3~5cm程度で、ニホンアマガエルよりもやや大きく、体表はツルッとして滑らかな印象です。平地から山地の森林や、その周辺の水田、池なんかに生息しています。
このカエルの生態は非常に特徴的で、特に産卵の仕方が面白いんですよ。
繁殖期になると、メスは水田の畦(あぜ)や水辺の土の中にオスと一緒に穴を掘って、その中にマシュマロや石鹸の泡のような、白くてふわふわの泡に包まれた卵(卵塊:らんかい)を産み付けます。私も田んぼの畦でこれを見つけた時は、「なんだこれ?」と本当にびっくりしました。
この泡は、卵を乾燥や外敵から守る役割があると言われています。そして、泡の中でオタマジャクシがかえり、雨水などで泡が溶け出すと、オタマジャクシは泡と一緒に田んぼや池へと流れ込み、水中で成長していくんです。うまくできてますよね。
激減したトノサマガエルとは

トノサマガエルは、私たちが子供の頃は、まさに「田んぼのカエル」の代表格でした。
体長は3.8~9.4cmと、田んぼで見かけるカエルとしてはかなり大型の部類に入ります。体色は緑色の個体や褐色の個体などバリエーションがあって、背中には複雑なまだら模様があります。
オスは喉の両側(左右)にある一対の「鳴嚢(めいのう)」と呼ばれる袋を風船のように大きく膨らませて、「グググッ、グググッ」と力強く鳴きます。この鳴き声も夏の田んぼの風物詩でした。
ただ、残念ながら、このトノサマガエルは近年、生息数が全国的にかなり減っているみたいで、私の周りでも以前ほどは見かけなくなった気がします。後述する田んぼの環境変化が大きく影響していると言われていますね。ちょっと寂しい限りです。
ずんぐり体型ダルマガエル
トノサマガエルに非常によく似ているのが、ダルマガエルです。
名前の通り、トノサマガエルよりも体型がずんぐりしていて、手足、特に後ろ足が短いことから「ダルマ」の名がついたそうです。地域によってトウキョウダルマガエルやナゴヤダルマガエルといった亜種に分類されています。
トノサマガエルとの実用的な見分け方は、後ろ足を前に折りたたんでみることです。トノサマガエルは後ろ足が長いので中指の先端が鼓膜(耳)に届きますが、ダルマガエルは後ろ足が短いので届かない、という違いがあります。
このダルマガエルも、トノサマガエル以上に生息環境の悪化(後述します)によって個体数が激減しています。特にナゴヤダルマガエルなどは、環境省のレッドリスト2020では絶滅危惧IB類(EN)に指定されており((出典:環境省「日本のレッドデータ検索システム」))、近い将来に野生での絶滅の危険性が高いとされる、非常に深刻な状況にあります。保全活動が各地で行われていますが、予断を許さない状況ですね。
アカガエルの簡単な見分け方

田んぼの周りでは、緑色のカエルだけでなく、茶色っぽいカエルもよく見かけますよね。その代表が「アカガエル」の仲間です。主にニホンアカガエルとヤマアカガエルの2種類がいます。
どちらも体長4~8cm程度で、赤褐色から黄褐色をしていて、見た目が本当にそっくりなんです。繁殖期以外は森林で暮らしていることが多いんですが、餌場として水田を利用します。
この2種類、識別が難しいんですが、決定的な見分けポイントがあります。
ニホンアカガエル vs ヤマアカガエル
注目すべきは、背中にある一対の隆起した線(背側線:はいそくせん)です。
- ニホンアカガエル:背中の線が、鼓膜(耳)のあたりで曲がらず、「真っ直ぐ」後方へ伸びています。
- ヤマアカガエル:背中の線が、鼓膜(耳)のあたりで外側に「くの字に曲がっている」のが最大の特徴です。
ここをチェックするのが一番確実かなと思います。捕まえてじっくり見ないと難しいかもしれませんが、この違いを知っていると観察が楽しくなりますよ。
ちなみに、アカガエルの仲間は繁殖期が非常に早いのが特徴で、地域によってはまだ雪が残る2月頃の寒い時期に、いち早く水田や湿地に集まって、ゼリー状の大きな卵塊を産みます。春の訪れを告げるカエルとも言えますね。
田んぼのカエル、緑色の種類の見分け方
さて、田んぼで見るカエルで一番混同しやすいのが、やはり「緑色のカエル」ですよね。先ほど紹介したニホンアマガエルとシュレーゲルアオガエルです。
どちらも鮮やかな緑色で、同じような場所にいるので、「あれ、どっちだ?」となることが多いと思います。私も最初はそうでした。
でも、慣れると簡単に見分けられます。一番確実なポイントは「顔」です。
ニホンアマガエル vs シュレーゲルアオガエル(最重要)
注目すべきは、目の横のラインです。
- ニホンアマガエル:鼻先から目を通って鼓膜(耳)の後ろまで、はっきりとした「黒いライン(模様)」があります。
- シュレーゲルアオガエル:その「黒いライン」がありません。顔全体が一様な緑色で、ツルッとしています。
この黒いラインの有無が、最も簡単で確実な見分け方です。
他にも、シュレーゲルアオガエルの方が鼻先がやや鋭角的に尖っているのに対し、ニホンアマガエルは比較的丸い、といった形状の違いや、シュレーゲルアオガエルの方が一回り大きい傾向がある、といった違いもあります。
見分け方を簡単な表にまとめてみますね。
| 種類 | 体色 | 目の横の線 | 鼻先の形 | 産卵場所 |
|---|---|---|---|---|
| ニホンアマガエル | 緑(環境で変化) | あり(黒い線) | 丸い | 水中の植物など |
| シュレーゲルアオガエル | 緑(変化しない) | なし | 尖っている | 土の中(泡の卵) |
こうして比べると、違いがはっきりしますよね。ぜひ今度、田んぼで緑色のカエルを見かけたら、顔をじっくり観察してみてください。
田んぼのカエルの種類、生態ガイド
カエルの種類が見分けられるようになると、今度は彼らの生態や、私たち人間との関わりについても気になってきますよね。
「カエルって触っても大丈夫?」「鳴き声で種類はわかる?」「昔よりカエルが減った気がするけど、どうして?」
ここでは、そうした疑問に答える形で、田んぼとカエルの関係について、もう少し詳しく見ていきましょう。
カエルに毒はある?触った後の注意点
「カエルって毒があるの?」とか「触ったら危ない?」と心配になる方もいるかもしれません。特にお子さんと一緒に田んぼに行くときは気になりますよね。
結論から言うと、田んぼで一般的に見られるニホンアマガエルやアカガエル、トノサマガエルなどは、素手で触っても基本的に危険はありません。
ただし、少し注意が必要です。
ニホンアマガエルの皮膚の刺激物
実は、ニホンアマガエルの皮膚から出る粘液(分泌物)には、微弱ながら「毒」というか「刺激物」が含まれています。これは、外敵から身を守るための化学物質ですね。
健康な皮膚で触るだけなら、ほとんど問題になりません。しかし、カエルを触ったその手で、うっかり「目」や「傷口」をこすってしまうと大変です。
毒液が粘膜や傷口を強く刺激し、激しい痛みや充血、炎症を引き起こすことがあります。私も子供の頃に経験がありますが、本当に痛いんですよ。
ヒキガエルの強力な毒(要注意)
田んぼそのものよりは、周辺の草地や人家の庭などで見かけることが多いですが、ヒキガエル(アズマヒキガエルやニホンヒキガエル)には特に注意が必要です。
彼らは耳の後ろにある耳腺(じせん)から、「ブフォトキシン」という強力な毒を分泌します。これは、目に入ると失明の危険性があり、犬や猫などのペットが口にすると痙攣や呼吸困難を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもある危険な毒です。
ヒキガエルは体が大きく、動きもゆっくりしていますが、見かけてもむやみに触らないのが賢明です。
【結論】カエルに触れたらどうするか
田んぼのカエル(アマガエル、アカガエル等)は、素手で触っても基本的に大丈夫ですが、以下の点を徹底してください。
- 目をこすらない:カエルを触った手では、絶対に目をこすったり、鼻や口を触ったりしないこと。
- すぐに手洗い:観察が終わったら、すぐに石鹸を使って手首までしっかり洗うこと。
- ヒキガエルには注意:ヒキガエル(イボイボした大型のカエル)は、強力な毒を持つため触らないこと。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な助言ではありません。万が一、カエルを触った後に目や皮膚に強い痛みや異常を感じた場合は、こすらずにすぐに大量の流水で洗い流し、速やかに医療機関(眼科や皮膚科)にご相談ください。
ペットがアマガエルを口にして、よだれが止まらなくなるといったケースもよくあるみたいなので、ワンちゃんやネコちゃんを飼っている方は、散歩中なども少し注意が必要かもですね。安全に観察を楽しむためにも、「触った後は手洗い」、これを徹底するのが大事です。
鳴き声で種類はわかる?

カエルは、梅雨時や夏の夜に大合唱しますよね。あの鳴き声、実は種類によって全く違うんです。姿が見えなくても、鳴き声でどのカエルがいるのか判別できますよ。
田んぼでよく聞く声は、こんな感じです。
- ニホンアマガエル:「ゲッ、ゲッ、ゲッ」または「クワッ、クワッ」 (雨が降る前によく鳴くので「雨蛙」と呼ばれますね)
- トノサマガエル:「グググッ、グググッ」 (喉の両側を膨らませて鳴く、力強い声です)
- シュレーゲルアオガエル:「コロロロ…」「カラララ…」 (ニホンアマガエルより少し甲高い、小鳥がさえずるような声にも聞こえます)
- ニホンアカガエル:「キャラララ…」 (繁殖期の早い春先に、水面で鳴きます)
これらの鳴き声は、主にオスがメスを呼ぶための「求愛」や、他のオスに対して「ここは俺の縄張りだ!」と主張するために使われます。
声で判別できると、「あ、今日はシュレーゲルが鳴いてるな」とか「アマガエルが鳴き始めたから、そろそろ雨かな」なんて、田んぼ作業もちょっと楽しくなりますよ。最近はカエルの「鳴き声図鑑」みたいなサイトやアプリもあるみたいなので、興味があったら調べてみるのも面白いと思います。
カエルが減った理由と田んぼ環境

さっき、トノサマガエルやダルマガエルが全国的に激減しているという話をしましたが、これには私たちの生活、特に「近代的な農業」がもたらした田んぼの環境変化が大きく関係しているみたいなんです。
昔はどこにでもいたカエルが、なぜ姿を消しつつあるのか。その主な理由を3つ紹介します。
脅威1:稲作プロセスの変化「中干し」
現代の稲作(特にコシヒカリなどの品種)では、稲が育ちすぎて倒れること(倒伏:とうふく)を防いだり、根を地中に強く張らせて丈夫に育てるため、田植えから一定期間が経過すると、意図的に田んぼの水を抜いて地面を乾かす「中干し(なかぼし)」という作業をします。
この中干しは、稲の生育にとっては非常に重要な作業なんですが……この時期が、ダルマガエルなどのカエルの繁殖期、つまりオタマジャクシが水中で育つ時期と重なってしまうことが、カエルにとって致命的です。
水が抜かれた水田に取り残されたオタマジャクシは、水と共に干からびてしまい、成体になることができません。毎年これが繰り返されると、その田んぼでカエルが世代交代できなくなってしまいますよね。
脅威2:インフラの構造的変化「コンクリート水路」
もう一つの大きな原因が、田んぼの周りにある用水路や排水路です。
昔は土でできていて、緩やかな傾斜があり、草も生えていましたが、圃場(ほじょう)整備によって、効率的に水を流せるコンクリート製のU字溝に置き換えられました。
ところが、このコンクリート水路は、カエルにとって「脱出不可能な罠」になってしまっているんです。
壁面が垂直で滑りやすいため、一度転落したカエルが自力で脱出することが極めて困難なのです。特にトノサマガエルやダルマガエルは、アマガエルのような吸盤を持っていませんからね。
ある実験では、ニホンアカガエルはトウキョウダルマガエルよりも水路からの脱出率が高かったことが示されています。さらに、トウキョウダルマガエルは「体長の大きな個体」ほど脱出率が低いという結果も出ており、コンクリート水路がカエルの移動や生息を物理的に分断し、阻害していることがわかります。
脅威3:生息地そのものの消失
カエルが直面する脅威は、水田の中(中干し)と外(コンクリート水路)だけではありません。
そもそも、平坦な土地にある水田は、宅地や商業施設、道路などに転用されやすく、水田そのものが埋め立てられています。
また、減反政策による休耕田(作付けをしない田んぼ)の増加や、農業従事者の高齢化・後継者不足による稲作の廃止(耕作放棄)も、カエルが産卵し、オタマジャクシが育つことができる「湿地環境」の消失に直結しています。
こうした複合的な要因が絡み合って、カエルたちはどんどん住処を追いやられているのが現状なんですね。生き物と共生する農業の難しさを痛感します。
カエルは害虫を食べる益獣
「カエルが減ると、ちょっと寂しいね」という情緒的な問題だけではありません。実は、カエルが減ると、私たち農家にとっても非常に困ったことが起きます。
というのも、カエルは動くものに反応して捕食する習性があり、稲の害虫とされるカメムシやウンカ、イナゴなどを効率的に食べてくれる、非常に頼もしいパートナーだからです。
生物学的には「益獣(えきじゅう)」と呼ぶのが正しいみたいですね。
カエルがたくさんいる田んぼは、それだけ生物多様性が豊かである証拠であり、農薬に過度に頼らない農業、すなわち「生き物と共生する農業」を推進する上で、彼らは重要な指標生物であり、大切な仲間なんです。
カエルを守ることは、結果として減農薬や安全なお米作りにも繋がっているんだなと、私も田んぼでカエルを見るたびに感じています。
田んぼのカエルの種類と未来
今回は、田んぼでよく見かけるカエルの種類や、混同しやすいカエルの簡単な見分け方、そして彼らを取り巻く生態や環境問題について、詳しくまとめてみました。
ニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエルといった身近な種類から、数が減ってしまったトノサマガエルや絶滅が心配されるダルマガエルまで、田んぼには本当に多様なカエルが生息し、複雑な生態系を形作っています。
彼らの生態や、なぜ減っているのかを知ることで、田んぼが単なるお米の生産場所ではなく、多くの生き物の命を育む「豊かな湿地環境」の一部であることが、より深く理解できたのではないでしょうか。
最近では、カエルが水路から脱出できるように「スロープ」を設置したり、オタマジャクシのために中干しの時期をずらしたり、一時的な避難場所(ビオトープ)を作ったりする取り組みも始まっています。
カエルたちがこれからも元気に鳴き声を響かせてくれるような田んぼ環境を、私も一人の農家として、できる限り守っていきたいなと改めて思います。皆さんも今度田んぼでカエルを見かけたら、ぜひ種類を観察して、彼らの暮らしに思いを馳せてみてくださいね。

