家庭菜園で春菊を育てていると、「春菊の収穫はいつまで楽しめるのだろう?」という、収穫期間に関する純粋な疑問が湧いてきますよね。独特の香りと味わいで鍋物や和え物に欠かせない春菊ですが、その栽培は奥が深く、多くのポイントが存在します。プランターでの育て方から始まり、健全な成長に不可欠な間引きのタイミングはいつが良いのか、あるいは「もったいない」と感じて間引きしないとどうなるのか、悩むことも多いでしょう。また、愛情をかけているのに春菊がなかなか大きくならない時の原因や、品種によって異なる最終株間はどのくらいにすれば良いのかも、成功を左右する重要な知識です。さらに、長く楽しむための摘み取りでの収穫の仕方や、2回目の収穫に向けて再生するにはどうすれば良いか、栽培が冬に及ぶ場合の管理方法、収穫後の鮮度を保つ扱い、そして次の栽培計画に役立つ春菊の後に植える野菜の選び方まで、知りたいことは尽きません。この記事では、そんな春菊栽培に関するあらゆる疑問に、専門的な知識を交えながらも分かりやすくお答えし、あなたの家庭菜園を全力でサポートします。
この記事で分かること
- 春菊の基本的な栽培方法と生育サイクルに合わせた管理のコツ
- 株のタイプ(株張り・株立ち)に応じた最適な収穫時期と具体的な方法
- 収穫をシーズンを通して長く続けるための摘み取りと再生のテクニック
- 収穫後の品質を保つ保存方法や連作障害を避けるための土壌管理の知識
春菊の収穫はいつまで?栽培の基本
- プランターでの春菊の育て方
- 春菊の間引きのタイミングは?
- 春菊を間引きしないとどうなるか
- 最終株間はどのくらいが最適?
- 春菊が大きくならない時の原因
プランターでの春菊の育て方

春菊は、プランターを使えばベランダや玄関先などの省スペースでも手軽に栽培でき、土に触れる楽しさを実感できるため、家庭菜園の初心者にも心からおすすめできる野菜です。栽培を成功させ、新鮮な春菊を食卓に届けるためには、いくつかの基本的なポイントを押さえることが何よりも重要になります。
プランターと用土の準備
まず、栽培の土台となるプランターは深さが15cm以上ある標準的なサイズ(幅60~65cm程度)のものを選びましょう。春菊の根は比較的浅く張りますが、ある程度の土量があった方が土の温度変化が緩やかになり、何より乾燥を防ぎやすくなるため、生育が安定します。
用土は、肥料成分があらかじめ調整されている市販の野菜用培養土を使用するのが最も手軽で確実です。もし使用済みの土を再利用する場合は、必ず土の消毒を行い、新しい土や堆肥、元肥を混ぜて土壌環境をリフレッシュさせましょう。自分で土を配合する場合は、「赤玉土(小粒)6:腐葉土3:バーミキュライト1」の割合で混ぜ、元肥として緩効性の化成肥料(チッソ・リンサン・カリが同程度のもの)を規定量加えておくと良いでしょう。

種まきの手順
春菊の種まきは、春(3月~4月)と秋(9月~10月)の年2回可能です。春まきは気温の上昇とともに「とう立ち」(花芽が伸びてしまうこと)しやすいため、収穫期間が短めになる傾向があります。一方で、病害虫の心配が少なく、じっくり育てられる秋まきは、初心者の方に特におすすめの作型です。
種まきの方法は、プランターの土に深さ1cm程度の溝を10cm~15cm間隔で作り、そこに種が重ならないように1cm間隔で丁寧に「すじまき」します。春菊の種は発芽に光を必要とする「好光性種子」なので、土を厚く被せすぎないのが最大のポイントです。種が隠れるか隠れないか程度のごく薄い土をかけ、手のひらで軽く押さえて土と種を密着させます。最後に、ジョウロなどで優しくたっぷりと水やりをすれば完了です。発芽までは約1週間から10日ほどかかりますが、その間は土の表面が乾かないように、こまめな水やりを心がけてください。
発芽率をアップさせる一工夫
春菊の種は硬い種皮に覆われているため、そのまま蒔くと発芽が揃いにくいことがあります。発芽率を高めるために、種まきの前に一晩、種を水に浸しておくのがおすすめです。これにより種が水分を吸収し、発芽がスムーズになります。
春菊の間引きのタイミングは?

春菊をがっしりとした健康な株に育て、収穫量を最大限に増やすためには「間引き」が避けて通れない重要な作業です。間引きは、苗が密集することで起こる日照不足や風通しの悪化を防ぎ、一つひとつの株に十分な栄養とスペースを与え、大きく成長させるために行います。適切なタイミングを逃さず、丁寧に行いましょう。
間引きは、株の成長に合わせて主に2回に分けて行います。
1回目の間引き:初期の競争を緩和する
1回目の間引きは、発芽して本葉が1~2枚ほど展開した頃が適期です。この段階では、双葉の形が悪いもの、生育が明らかに遅いもの、隣の株とくっつきすぎている箇所などを中心に引き抜き、株と株の間隔(株間)が2~3cmになるように調整します。
間引く際は、残したい株の根を傷つけないよう、株元を指で優しく押さえながら、もう片方の手でゆっくりと引き抜くのがコツです。作業後は、残した株が不安定にならないよう、株元に軽く土寄せをしておきましょう。
2回目の間引き:本格的な生育スペースを確保する
2回目の間引きは、株がさらに成長し、本葉が4~5枚に増えてしっかりしてきた頃に行います。このタイミングで、再び生育の優劣を見極め、株間が5~6cm程度になるように調整します。この段階になると根も張ってきているため、無理に引き抜くと隣の株を傷める可能性があります。株元をハサミで切り取る方法も安全でおすすめです。
この2回目の間引きが終わったタイミングが、最初の「追肥」のベストタイミングです。肥料を与えることで、選抜された株のその後の成長を力強く後押しします。
間引き菜も立派な食材
間引きで抜いた若い春菊の苗は「間引き菜」として、とても美味しく食べられます。非常に柔らかく、香りもフレッシュなため、お味噌汁の具や吸い物、サラダのアクセント、おひたしなど、様々な料理で楽しめます。これも家庭菜園ならではの特権の一つです。
春菊を間引きしないとどうなるか

「たくさん収穫したいから一本でも多く残したい」という理由で、間引きをためらったり、ついつい甘めにしてしまったりする方もいるかもしれません。しかし、その親心がかえって春菊の健全な生育を妨げ、収穫の質と量を大きく落とす原因となってしまいます。
間引きを怠った場合に起こる主なデメリットは、以下の通り深刻なものばかりです。
1. 栄養の奪い合いによる生育不良
最も大きな問題は、限られたプランターのスペースと土の中の栄養を、過密状態の苗が一斉に奪い合うことです。その結果、どの株も十分に栄養を吸収することができず、全体的にひょろひょろと上にばかり伸びる「徒長(とちょう)」状態の弱々しい株になってしまいます。葉も小さく色つやが悪く、茎も細いため、本来の春菊の風味や食感を持つ収穫物は期待できません。
2. 日当たりと風通しの悪化による病気のリスク増大
葉が過剰に密集して生い茂ると、株元まで日光が届かなくなり、光合成が十分に行えなくなります。それ以上に問題なのが、風通しの悪化です。空気の流れが滞ると、葉の周りの湿度が常に高い状態になり、カビが原因で発生するうどんこ病やべと病といった病気の発生リスクが飛躍的に高まります。
3. 病害虫の温床になりやすい
前述の通り、密集して湿気がこもった環境は病気が発生しやすいだけでなく、アブラムシやヨトウムシといった害虫にとっても、外敵から身を守る絶好の隠れ家となります。一度害虫が発生すると、密集した葉の間で薬剤散布も行き届きにくく、あっという間に被害が全体に広がってしまう危険性があります。
間引きは「もったいない」ではなく「力強い株を育てるため」の選抜作業
間引きは、最終的に健康で美味しく、栄養価の高い春菊をたくさん収穫するための、いわばエリートを選抜する重要な作業です。心を鬼にして適切なタイミングで間引きを行い、選ばれた株に十分なスペースと栄養を集中させることが、成功への最も確実な近道となります。
最終株間はどのくらいが最適?
春菊の最終的な株間(株と株の間の距離)は、選んだ品種のタイプによって最適な間隔が大きく異なります。春菊には、株ごと収穫する「株張り型」と、わき芽を摘み取って長期間にわたり収穫する「株立ち型(摘み取り型)」があり、それぞれの生育特性に合わせたスペースを確保することが、収穫量を最大化する鍵となります。
品種タイプ | 特徴 | 最終株間 | 主な収穫方法 |
---|---|---|---|
株張り型 | 株元から葉が放射状に広がる。一斉に成長し、揃いが良い。 | 5~6cm | 抜き取り収穫 |
株立ち型 | 主茎が上に伸び、わき芽(側枝)が次々と発生する。 | 10~20cm | 摘み取り収穫 |
株張り型の場合
株張り型は、地面の近くから放射状に葉が広がるように成長し、比較的コンパクトにまとまるタイプです。この品種は、ある程度の大きさに育ったら株ごと引き抜いて一度に収穫するのが一般的です。
そのため、最終的な株間は5~6cm程度と、やや狭めが目安となります。本葉が4~5枚になった頃の2回目の間引きで、この間隔にしっかりと調整すれば、無駄なくスペースを使いながら質の良い春菊を育てることができます。
株立ち型(摘み取り型)の場合
一方で、家庭菜園で長く収穫を楽しみたい方に最適なのが株立ち型です。このタイプは主茎が上へと伸び、そのわきから出てくる側枝を何度も摘み取って収穫を続けます。長期間にわたって収穫を続けるためには、株全体が大きく成長するための十分なスペースが必要不可欠です。
このタイプを育てる場合は、2回目の間引きの後も株の成長に合わせて間引き(この場合は収穫を兼ねて行うことが多い)を続け、最終的な株間を10cm~20cmと、かなり広めに確保します。株間を広くとることで、株元までしっかりと日光が当たり、わき芽の発生が活発になります。結果として一本一本の株が大きくがっしりと育ち、収穫期間も格段に長くなります。
プランターで少しずつ収穫して、いつでも新鮮な春菊を食卓に加えたい、という方には、間違いなく株立ち型の品種がおすすめです。種袋の裏に品種のタイプが記載されているので、購入時にぜひチェックしてみてくださいね。
春菊が大きくならない時の原因
発芽も順調で、間引きも適切に行ったつもりでも、なぜか春菊が期待通りに大きくならない、という壁にぶつかることがあります。その場合、生育環境に何らかの問題が隠れている可能性が高いです。主な原因とそれぞれの対策を確認し、栽培環境を見直してみましょう。
1. 日照不足
春菊は日当たりの良い場所を好みますが、夏の強すぎる直射日光は葉焼けの原因になるため苦手です。しかし、建物の陰になるなどしてあまりにも日照時間が短いと、光合成が不足して生育が著しく鈍ってしまいます。特に徒長(ひょろ長く育つこと)している場合は日照不足のサインです。午前中を中心に、少なくとも半日以上は柔らかい日が当たる、風通しの良い場所が理想的な栽培環境です。
2. 水分不足
前述の通り、春菊は乾燥に非常に弱い野菜です。特にプランター栽培では土が乾きやすく、一度でも深刻な水切れを起こすと、根がダメージを受けて成長が著しく停滞します。土の表面が乾いて白っぽくなっていたら、すぐにプランターの底から水が流れ出るまでたっぷりと与える習慣をつけましょう。
3. 肥料不足
春菊は比較的肥料を好む野菜であり、生育期間を通じてコンスタントに栄養を必要とします。特に、摘み取り収穫を長く続ける場合は、定期的な追肥が絶対に欠かせません。2回目の間引き後や、収穫が始まった後は、2週間に1回程度のペースで追肥を行い、肥料切れを防ぎましょう。肥料が不足すると、下の葉から黄色く変色してきたり、新しい芽の伸びが悪くなったりします。大手種苗メーカーのサカタのタネのウェブサイトでも、追肥の重要性が解説されています。

4. 土壌の酸度(pH)が合っていない
見落としがちですが、深刻な生育不良の原因となるのが土壌の酸度です。春菊は酸性の土壌を極端に嫌います。日本の土壌は雨の影響で自然と酸性に傾きがちなので、これが原因で根が栄養をうまく吸収できなくなっていることがあります。植え付け前に苦土石灰を混ぜて土壌のpHを6.0~6.5程度の中性に近い弱酸性に調整しておくことが非常に重要です。生育の途中で根本的に改善するのは難しいため、土づくりの段階でしっかりと対策しておきましょう。
春菊の収穫はいつまで?長く楽しむコツ
- 春菊の栽培で知っておきたい冬越し
- 摘み取りでの収穫の仕方
- 2回目の収穫と再生するには?
- 収穫後の春菊の保存方法
- 春菊の後に植える野菜の選び方
春菊の栽培で知っておきたい冬越し

春菊は鍋物の季節に旬を迎えることからも分かるように、冷涼な気候を好む野菜です。寒さには比較的強い一面も持っていますが、日本の冬の厳しい霜や凍結は、葉を傷めたり、最悪の場合は枯らしたりする原因になります。しかし、適切な対策を講じることで、真冬でも収穫を続けることが可能です。
春菊の耐寒性
春菊の生育に最も適した温度は15~20℃ですが、本葉が数枚出てしっかりと根付いた株であれば、氷点下にならない程度の低温には耐えることができます。ただし、気温が5℃以下になると生育は非常にゆっくりになります。栽培の上で最も注意すべきは、放射冷却によって発生する「霜」です。強い霜が直接葉に降りると、葉の表面の細胞内の水分が凍って膨張し、細胞壁が破壊されてしまいます。これが、葉が黒く変色して傷んでしまう原因です。
トンネル栽培で防寒対策
冬の間もコンスタントに収穫を続けたい場合に、最も手軽で効果的なのが「トンネル栽培」です。畝やプランターの上に弓状の支柱を数本立て、その上をビニールや不織布といった被覆資材でトンネルのように覆う、昔ながらのシンプルな方法です。
資材の種類 | 特徴と注意点 |
---|---|
不織布 | 通気性と適度な保温性を両立しており、霜よけに非常に効果的です。日中の温度が上がりすぎず、蒸れにくいのが最大のメリットです。 |
ビニール | 保温性が非常に高く、厳寒期の温度確保に優れています。ただし、通気性がないため、晴れた日の日中は内部が高温になりやすいため、裾を開けるなどの換気作業が必須です。 |
このトンネルで霜から守ってあげることで、株の傷みを防ぎ、冬の間も少しずつですが成長を続けさせることが可能です。うまく管理すれば、秋に種をまいた株を、翌年の1月~2月頃まで長く収穫し続けることも夢ではありません。
換気と水やりを忘れずに
特にビニールトンネルの場合、晴れた日の日中は内部が30℃を超えることもあり、高温多湿で病気の原因になります。日中は必ず裾を少し開けて換気を行いましょう。また、冬場は空気が乾燥しており、トンネル内は雨も当たらないため、土が乾きがちです。暖かい日の午前中に、土の乾き具合を確認して適宜水やりをしてください。
摘み取りでの収穫の仕方

春菊の収穫方法には、株ごと引き抜いてしまう「抜き取り収穫」と、必要な分だけを摘み取って株を長く維持する「摘み取り収穫」の2種類が存在します。どちらの方法を選ぶかは、栽培している春菊の品種の特性(株張り型か株立ち型か)によって決まります。家庭菜園で長く収穫の喜びを味わうなら、摘み取り収穫が断然おすすめです。

抜き取り収穫(株張り型)
株張り型の春菊は、草丈が20cm程度に育ったら収穫の適期です。このタイプはわき芽の発生が少ないため、収穫する際は株元を清潔なハサミで切り取るか、株ごと引き抜きます。一度に全てを収穫し、畑をリセットする方法です。
摘み取り収穫(株立ち型)
家庭菜園で少しずつ、長く楽しむのに最も適しているのが、この摘み取り収穫です。茎が上に伸びていく株立ち型の品種が、この収穫方法に向いています。
最初の収穫は、主茎の草丈が20~25cm程度に伸びた頃がベストなタイミングです。このとき、いきなり根元から切るのではなく、株元のしっかりとした本葉を3~4枚残して、その少し上を清潔なハサミで摘み取ります。この最初の収穫を「摘心(てきしん)」とも呼び、この作業がスイッチとなって、残した葉の付け根から新しいわき芽が勢いよく成長を始めます。
摘み取り収穫の基本サイクル
- 最初の収穫(摘心):草丈が20~25cmになったら、下の葉を3~4枚残して主茎を収穫する。
- わき芽の成長:数週間後、残した葉の付け根から新しい「わき芽(側枝)」が左右に伸びてくる。
- 2回目以降の収穫:伸びてきたわき芽が15cm~20cm程度になったら、そのわき芽の葉を2枚ほど残し、その先を摘み取って収穫する。
- 繰り返しの収穫:このサイクルを繰り返すことで、株がクリスマスツリーのような形に広がり、次から次へと収穫が可能になる。
2回目の収穫と再生するには?
摘み取り収穫の最大の魅力であり醍醐味は、一度収穫して終わりではなく、植物の生命力を活かして2回目、3回目と繰り返し、長期間にわたって収穫できる点にあります。この「再生」のサイクルをうまく維持し、株の勢いを落とさないためには、いくつかの重要なポイントがあります。
わき芽を育てるのが再生の基本
前述の通り、春菊は摘み取った茎の葉の付け根(葉腋)から、新しい「わき芽」を伸ばして再生するという性質を持っています。そのため、収穫する際には必ず下に数枚の葉と茎を残すことが絶対的な条件です。この葉が、次のわき芽を育てるための「工場」の役割を果たします。もし間違って全ての葉を根元から刈り取ってしまうと、新しい芽が出る場所がなくなり、その株は光合成もできずに再生不能となってしまいます。
再生に不可欠なエネルギー補給、「追肥」
次々と新しい芽を伸ばし、再生を繰り返すためには、人間が食事でエネルギーを補給するのと同じように、春菊も多くのエネルギー、つまり栄養(肥料)を必要とします。収穫が始まったら、株の勢いを維持するために2週間に1回程度のペースで追肥(ついひ)を行いましょう。
肥料が切れてしまうと、新しい芽の伸びが悪くなったり、葉の色が黄色っぽくなったりと、再生力が一気に落ちてしまいます。プランターの縁に沿ってパラパラと化成肥料をまき、表面の土と軽く混ぜ合わせることで、効率よく栄養を供給できます。液体肥料を水やりの際に与えるのも、即効性があり効果的です。
収穫は、植物にとって体力を大きく消耗する大仕事です。収穫というご褒美をいただいた後は、お礼に肥料という栄養満点のごはんをあげる、というイメージを持つと分かりやすいですね。こうすることで、春菊も元気に再生して、次の収穫で私たちに応えてくれます。
収穫後の春菊の保存方法
収穫したての春菊は、スーパーで買うものとは比べ物にならないほど香りが高く、みずみずしいのが特徴です。しかし、その繊細さゆえに、収穫後は何もしなければすぐに水分が抜けてしなびてしまいます。採れたての美味しさを少しでも長く保つために、適切な方法で保存しましょう。
春菊には、抗酸化作用を持つβ-カロテンが豊富に含まれていることが知られています。文部科学省の食品成分データベースによると、ゆでた春菊100gあたりには4,500μgのβ-カロテンが含まれるとされており、これは緑黄色野菜の中でもトップクラスです。適切な保存で、こうした栄養素も逃さず摂取したいものです。
冷蔵保存(数日間で消費する場合)
数日以内に使い切る場合は、冷蔵保存が基本です。最も重要なポイントは「乾燥を防ぎ、適度な湿度を保つこと」です。
- 収穫した春菊の根元を、湿らせたキッチンペーパーや新聞紙で優しく包みます。
- 全体をポリ袋や野菜用の保存袋に入れます。このとき、袋の口は完全に密封せず、少し開けておくことで、野菜が呼吸する際に出るエチレンガスがこもるのを防ぎます。
- 冷蔵庫の野菜室に、牛乳パックなどを利用して茎を下にした「立てた状態」で保存します。これにより、植物が本来生えていた状態に近くなり、鮮度が長持ちします。
この方法で、3~5日程度はシャキッとした美味しい状態を保つことができます。
冷凍保存(長期間ストックする場合)
すぐに使い切れないほどたくさん収穫できた場合は、冷凍保存が非常に便利です。ただし、生のまま冷凍すると解凍時に水分が抜けて食感が大きく損なわれるため、一度さっと加熱(ブランチング)してから冷凍するのが鉄則です。
- 春菊を土などが残らないようによく洗い、塩を少々加えた熱湯で硬めに茹でます(沸騰してから20~30秒が目安)。
- 茹で上がったらすぐに冷水にとって色止めをし、粗熱が取れたら水気を優しく、しかし、しっかりと絞ります。
- おひたしや味噌汁の具など、使いやすい長さにカットし、1回分ずつ小分けにしてラップでぴったりと包みます。
- 冷凍用の保存袋に入れて、できるだけ空気を抜いてから冷凍庫で保存します。
このひと手間を加えることで、約1ヶ月はおいしく保存できます。使う際は解凍の必要はなく、凍ったままお味噌汁に入れたり、炒め物に加えたり、自然解凍して和え物に使ったりと、幅広く活用できて非常に便利です。
春菊の後に植える野菜の選び方
一つの作物を収穫し終えた後、同じ場所に次に何を植えるか計画することを「後作(あとさく)」と呼びます。この後作計画を立てる際に、家庭菜園でもプロの農家でも必ず考慮しなければならないのが「連作障害」のリスクです。
連作障害とは?
連作障害とは、同じ科の野菜を同じ場所で連続して栽培することにより、土壌中の特定の養分バランスが崩れたり、その野菜を好む特有の病原菌や害虫が土の中に増えたりして、次に植えた作物の生育が著しく悪くなる現象を指します。春菊はキク科の野菜なので、収穫後に同じ場所にまたキク科の野菜を植えるのは、連作障害のリスクを高めるため避けるべきです。
避けるべきキク科の野菜
レタス類、ごぼう、フキ、キク(観賞用)など。特にレタスは家庭菜園でも人気の野菜なので注意が必要です。
春菊の後作におすすめの野菜
連作障害を効果的に避けるためには、異なる科の野菜を順番に栽培する「輪作(りんさく)」を実践するのが基本です。春菊の後作としては、土壌環境に良い影響を与える以下のような野菜が特におすすめです。(出典:JAグループ「連作障害とは?原因と対策について」)
科 | おすすめの野菜 | 推奨する理由 |
---|---|---|
マメ科 | エダマメ、インゲン、ソラマメ、スナップエンドウなど | 根に共生する「根粒菌(こんりゅうきん)」が、空気中の窒素を植物が利用できる形に変えて土壌に供給してくれるため、土を肥沃にする効果があります。「天然の肥料」とも言える存在です。 |
アブラナ科 | コマツナ、カブ、ブロッコリー、ハクサイなど | 生育期間が短いものが多く、春菊とは異なる養分を必要とするため、土壌養分の偏りをリセットしやすいです。 |
ナス科 | トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモなど | 春菊が比較的浅い土層に根を張るのに対し、ナス科の多くは深く広く根を張るため、異なる土層の養分を効率よく利用できます。 |
このように、異なる科の野菜を意識してローテーションさせることで、土壌の健康を長期的に保ち、病害虫のリスクを減らしながら、持続可能な家庭菜園を楽しむことができます。
春菊の収穫がいつまでかの総まとめ
この記事で解説してきた、春菊の収穫時期を最大限に延ばし、長く楽しむための栽培管理のポイントを最後にリスト形式でまとめます。これらの要点を押さえることで、あなたの春菊栽培はきっと成功に近づくはずです。
- 春菊の収穫時期は品種(株張り型・株立ち型)や栽培時期(春まき・秋まき)によって大きく異なる
- 春まきは気温上昇でとう立ちしやすいため4月~6月、秋まきは長く収穫でき10月~翌年1月頃が主な収穫期
- 病害虫の発生が少なく気候も安定している秋まき栽培が初心者には特におすすめ
- プランターで栽培する場合は根の健康のために深さ15cm以上のものを選ぶ
- 間引きは本葉1~2枚の頃と4~5枚の頃の2回が基本で、生育を揃えるために必須の作業
- 間引きをしないと徒長してしまい、病害虫の原因にもなるため収穫の質・量ともに低下する
- 一度に収穫する「株張り型」の最終株間は密度を高められる5~6cmが目安
- 長く収穫できる「株立ち型」は側枝のスペース確保のため最終株間を10~20cmと広めにとる
- 冬越しには不織布やビニールを使ったトンネル栽培で霜よけ対策をすることが極めて有効
- 摘み取り収穫では次に伸びるわき芽のために下に葉を数枚残すのが再生の絶対的なコツ
- 2回目以降の収穫で勢いを維持するには2週間に1度の追肥による栄養補給が不可欠
- 収穫後は湿らせたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で立てて保存する
- 長期保存する場合は、さっと硬めに茹でてから水気を絞り、小分けにして冷凍するのが良い
- 収穫後の土壌では連作障害を避けるため、レタスなどのキク科以外の野菜を植える
- 後作には土を肥沃にするマメ科や、異なる養分を吸収するアブラナ科の野菜が特におすすめ