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納豆菌を畑で使うデメリットと対策を徹底解説【完全ガイド】

家庭菜園や農業で土づくりに良いとされる納豆菌ですが、その効果に期待する一方で「納豆菌を畑で使うデメリットはないのだろうか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実は、納豆菌の利用には多くのメリットがある反面、使い方を誤ると予期せぬ問題を引き起こす可能性もあります。例えば、適切な液肥の作り方をしないと納豆菌水が腐ることもあれば、散布の頻度を間違えることで思うような効果が得られないこともあります。また、納豆を土に埋める方法や、どの植物に使うかによっても結果は変わってきますし、連作障害の対策として期待される一方で、アブラムシへの直接的な効果や、虫が寄ってくるのではないかという心配も尽きません。この記事では、納豆菌を畑で活用する上でのデメリットに焦点を当て、その原因と対策を科学的な根拠に基づいて詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 納豆菌が土壌に与える具体的な効果
  • 納豆菌を利用する際のデメリットと注意点
  • 家庭でできる納豆菌液肥の作り方と使い方
  • 病害虫への影響と正しい対策
目次

納豆菌の畑利用、デメリットはある?

  • 納豆菌がもたらす土壌への効果
  • 連鎖障害を軽減する仕組み
  • どの植物に使うのが効果的か
  • 納豆を土に埋める正しい方法
  • 簡単な納豆菌液肥の作り方
  • 畑への散布方法とタイミング

納豆菌がもたらす土壌への効果

納豆菌を畑に利用する最大のメリットは、その土壌改良効果にあります。納豆菌は、正式には「枯草菌(こそうきん)」の一種であるバチルス・サブチルス・ナットウ(Bacillus subtilis var. natto)と呼ばれる微生物です。この菌が土の中で増殖することで、様々な良い影響が期待できます。

まず、納豆菌は有機物の分解能力が非常に高いことが特徴です。畑に残った作物の残渣や堆肥などの有機物を分解し、植物が吸収しやすい栄養素に変える働きをします。特に、土壌に固定されて植物が利用しにくくなったリン酸を、再び吸収できる形に変える効果(リン酸の可溶化)が知られています。これにより、化学肥料に頼らなくても作物が元気に育つ土壌環境が整います。

さらに、納豆菌の活動は土の物理的な構造も改善します。菌が増殖する過程で分泌する粘性物質が、土の粒子同士を結びつけ、「団粒構造」の発達を促進します。団粒構造の土は、水はけと水持ちのバランスが良く、空気も通りやすいため、植物の根が深くまで伸びやすくなります。これにより、根腐れの防止や乾燥への耐性向上につながるのです。

納豆菌による主な土壌改良効果

このように、納豆菌は単に栄養を補うだけでなく、土壌そのものを物理的、化学的、生物的に健全な状態へと導いてくれる頼もしい存在です。

  • 有機物の分解促進: 堆肥や残渣を分解し、栄養素を供給する。
  • 団粒構造の促進: 土をふかふかにし、通気性や保水性を向上させる。
  • 病原菌の抑制: 有用菌が優勢な環境を作り、病気のリスクを減らす。

連鎖障害を軽減する仕組み

同じ場所で同じ科の作物を続けて栽培すると、土壌中の特定の栄養素が失われたり、特定の病原菌や害虫が増えたりして生育が悪くなる「連作障害」が発生しやすくなります。納豆菌は、この連作障害を軽減する上でも重要な役割を果たします。

その主な仕組みは「拮抗(きっこう)作用」と呼ばれるものです。納豆菌は非常に繁殖力が強く、土壌や植物の根の周りで増殖することで、病気の原因となる糸状菌(フザリウム菌など)や他の有害な微生物が生息する場所や栄養を奪い取ります。このように、無害な菌が先に陣地を確保することで、後からやってくる悪い菌が増えるのを防ぐのです。これは、農薬のように病原菌を直接殺すわけではありませんが、病気が発生しにくい環境を維持する「生物的防除(バイオコントロール)」として非常に有効です。

また、納豆菌をはじめとする有用微生物が多様な生態系を形成することで、土壌環境が安定します。特定の微生物だけが異常繁殖するのを防ぎ、土壌全体のバランスを健全に保つことが、連作障害の根本的な対策となるのです。

エンドファイトとしての役割

近年では、納豆菌の一部が植物の内部に共生する「エンドファイト」として働き、植物自体の免疫力を高めたり、病害虫への抵抗力を向上させたりする効果も研究されています。土の中だけでなく、植物と直接協力して健康を守る仕組みもあるのです。

どの植物に使うのが効果的か

納豆菌は、特定の植物に限定されず、幅広い種類の作物に良い効果が期待できます。特に、トマト、きゅうり、ナスなどの果菜類や、大根、人参などの根菜類は、土壌の状態が生育に大きく影響するため、納豆菌による土壌改良の恩恵を受けやすいでしょう。

ただし、植物によっては効果の出方が異なる場合もあります。例えば、ホウレンソウなどの一部の葉物野菜は、土壌の急激な変化に敏感なことがあるため、最初は少量から試してみるのが安心です。基本的には、ほとんどの家庭菜園で栽培される野菜や果樹、花卉に安心して使用できると考えてよいでしょう。

どの植物に使うか迷ったら、まずは土壌改良を目的として畑全体に施してみるのがおすすめです。特定の植物を狙うというよりは、「畑全体の地力を上げる」という視点で活用すると、結果的に多くの植物が良い影響を受けますよ。

重要なのは、植物の種類よりも、その畑の土壌の状態です。粘土質で固い土壌や、長年化学肥料を使ってきたことで地力が落ちていると感じる畑ほど、納豆菌による改善効果を実感しやすいと言えます。

納豆を土に埋める正しい方法

納豆菌を手軽に畑で利用する方法として、市販の納豆を直接土に埋めるやり方があります。ただし、効果を最大限に引き出すためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。

準備するものと手順

  1. 納豆の選択: タレやからし、添加物が含まれていない、納豆菌が生きた状態の「無添加」の納豆を選びます。賞味期限が切れたものでも問題ありません。
  2. 量の目安: 1平方メートルあたり大さじ1〜2杯程度が適量です。多すぎると、後述するデメリットの原因になるため注意が必要です。
  3. 埋める深さと場所: 畑の土、深さ10〜15cm程度の場所に埋めます。納豆菌は酸素を好む好気性菌なので、深すぎると活動が鈍くなります。畑全体に数カ所、点在させるように埋めると効果的です。
  4. タイミング: 作物を植え付ける2週間ほど前に行うのが理想的です。納豆菌が土の中で増殖し、環境が安定するまでの時間を確保します。

納豆の埋めすぎに注意!

「効果を高めたいから」と大量の納豆を一度に埋めるのは逆効果です。納豆のタンパク質が分解される過程で、アンモニアガスが発生して根を傷めたり、他の微生物とのバランスが崩れて土壌環境が悪化したりする恐れがあります。必ず適量を守りましょう。

より効果を高めたい場合は、米ぬかや腐葉土と一緒に混ぜてから埋めると、納豆菌のエサとなり、発酵が促進されます。

簡単な納豆菌液肥の作り方

納豆を直接埋めるのに抵抗がある方や、より手軽に広範囲へ散布したい場合には、納豆菌液肥(納豆水)を手作りするのがおすすめです。家庭にあるもので簡単に作ることができます。

基本的な納豆菌液肥のレシピ

  • 納豆: 1パック
  • 砂糖: 大さじ1杯(黒糖やきび砂糖がミネラル豊富で望ましい)
  • ぬるま湯(30〜40℃): 500ml〜1L
  • ペットボトル(2Lサイズ): 1本

作り方の手順

  1. 納豆を容器に入れ、ネバネバの糸がよく出るまでしっかりとかき混ぜます。ミキサーを使ったり、袋に入れて手で揉み潰したりすると、より細かくなります。
  2. ペットボトルに、混ぜた納豆、砂糖、ぬるま湯を入れ、キャップを締めてよく振り混ぜます。
  3. キャップを少し緩め、直射日光の当たらない暖かい場所(20〜30℃が理想)に1日〜3日ほど置きます。
  4. 1日に1〜2回、ペットボトルを振って中身を混ぜ、キャップを緩めてガス抜きをします。納豆の香りがし、少し泡立つのが発酵しているサインです。

無調整豆乳を使う方法も

水の代わりに無調整豆乳を使うと、納豆菌のエサとなるタンパク質が豊富なため、より強力に培養することができます。その場合も、砂糖を加えることで発酵がスムーズに進みます。

完成した液肥は、水で100倍〜500倍に薄めて使用します。原液のままでは濃度が高すぎるため、必ず希釈してください。

畑への散布方法とタイミング

手作りした納豆菌液肥や市販の納豆菌資材は、正しい方法で散布することでその効果を最大限に発揮します。

散布方法

主に2つの方法があります。

  1. 土壌灌注(かんちゅう): 薄めた液肥をジョウロや動力噴霧器で、作物の株元や畑全体にたっぷりと撒く方法です。土壌全体の微生物環境を改善するのに最も効果的です。
  2. 葉面散布: 薄めた液肥をスプレーボトルなどに入れ、植物の葉の表と裏に霧状に吹きかける方法です。葉の表面にいる病原菌の侵入を防いだり、植物の健康を維持したりする効果が期待できます。葉面散布の場合は、土壌灌注よりも薄めの500倍〜1000倍希釈が目安です。

散布のタイミング

納豆菌は生き物なので、散布するタイミングも重要です。

タイミング 理由
晴れた日の午前中 適度な地温と湿度により、納豆菌が土壌に定着しやすくなります。
雨の日や強風の日を避ける 雨で流されたり、風で飛散したりして効果が薄れるのを防ぎます。
農薬散布との間隔を空ける 殺菌剤は納豆菌も殺してしまう可能性があります。殺菌剤を使用した場合は、1週間程度間隔を空けてから散布するのが安全です。

特に、畑に堆肥などの有機物を施した直後に散布すると、納豆菌のエサが豊富なため、より活発に増殖しやすくなります。


納豆菌の畑利用、デメリットの対策は?

  • 使用する頻度と適切な量
  • 作った納豆水が腐るとどうなる?
  • アブラムシへの直接的な効果はない
  • 納豆菌で虫が寄ってくる可能性
  • 納豆菌の畑のデメリットと上手な活用法

使用する頻度と適切な量

納豆菌は有益な微生物ですが、何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。使用する頻度や量が多すぎると、かえってデメリットが生じる可能性があります。

過剰に使用した場合、特定の菌(納豆菌)だけが土壌で爆発的に増えすぎてしまい、もともと土にいた乳酸菌や放線菌といった他の有用な微生物とのバランスを崩してしまうことがあります。微生物の多様性が失われると、かえって土壌環境が不安定になり、特定の病気が発生しやすくなることも考えられます。

適切な頻度の目安

  • 土作り(植え付け前): 1回、集中的に散布します。
  • 生育期間中: 月に1〜2回程度が目安です。

作物の様子や土の状態を観察しながら、頻度を調整することが大切です。特に、土がふかふかになってきたり、作物の生育が順調だったりする場合は、頻度を減らしても問題ありません。

濃度も重要

手作りの液肥を使う際は、必ず規定の倍率(100倍〜500倍)に薄めてください。濃すぎる液肥は、植物の根にダメージを与えたり、土壌のpHを急激に変化させたりする原因となります。

作った納豆水が腐るとどうなる?

手作りの納豆菌液肥(納豆水)は、正しく発酵させれば良い効果をもたらしますが、管理を誤ると発酵ではなく「腐敗」してしまうことがあります。腐敗した液肥を畑にまくと、有益どころか深刻な悪影響を及ぼすため、見極めが非常に重要です。

発酵と腐敗の見分け方

正常な発酵 腐敗
匂い 納豆のような香ばしい匂いや、少し甘酸っぱい発酵臭 アンモニア臭、生ゴミのような腐った匂い、ドブのような悪臭
見た目 薄い茶色や琥珀色。表面に白い膜(産膜酵母)ができることがある 濁った濃い茶色や黒っぽい色。緑や黒のカビが発生している
粘度 ネバネバ感がなくなり、サラサラになる 異常な粘り気やドロドロした状態になる

腐敗した液肥には、大腸菌やウェルシュ菌などの有害な細菌が繁殖しています。これを畑にまくと、土壌に病原菌を広めてしまったり、土壌が極端な酸性やアルカリ性に傾いて植物の根を傷めたりする原因になります。もし、少しでも「おかしいな?」と感じたら、もったいないと思っても使用を中止し、新しく作り直すのが賢明です。

腐敗させないコツは、清潔な容器を使うこと、温度管理(高温すぎない場所)、そして早めに使い切ることです。一度に大量に作らず、1〜2週間で使い切れる分量を作るようにしましょう。

アブラムシへの直接的な効果はない

「納豆菌を使えば害虫もいなくなる」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、残念ながら納豆菌自体にアブラムシなどを直接殺す殺虫効果はありません

ただし、間接的な効果は期待できます。納豆菌によって土壌環境が改善され、植物が健康に育つと、植物自身の抵抗力が高まります。人間と同じで、健康な植物は病害虫の被害を受けにくくなるのです。つまり、納豆菌は「害虫に強い体(植物体)を作る」手助けをする役割と考えるのが適切です。

実際に、納豆菌を定期的に使用している畑では、結果的にアブラムシなどの被害が減ったという事例も報告されています。しかし、これはあくまで植物が健全に育った結果であり、すでに大量発生してしまったアブラムシを駆除する目的で納豆菌液を散布しても、即効性は期待できません。

アブラムシ対策の基本

アブラムシが発生した場合は、納豆菌に頼るのではなく、牛乳スプレーや木酢液、あるいは市販の薬剤など、適切な方法で対処する必要があります。防虫ネットなどの物理的な防除と組み合わせるのが基本です。

納豆菌で虫が寄ってくる可能性

納豆菌のデメリットとして、しばしば指摘されるのが「虫が寄ってくる」問題です。特に、手作りの納豆菌液肥は発酵過程で独特の匂いを放つため、コバエやキノコバエ、ナメクジといった虫を誘引してしまうことがあります。

これは、液肥に含まれる糖分やアミノ酸などが虫のエサとなるためです。特に、発酵が未熟だったり、原液に近い濃い状態で使用したりすると、匂いが強くなり、虫が集まりやすくなります。住宅地が近い家庭菜園などでは、この匂いや集まる虫が近隣トラブルの原因になる可能性もゼロではありません。

虫を寄せ付けないための対策

  • 完熟させてから使う: 発酵がしっかり進むと、甘い匂いが減り、虫が寄りにくくなります。
  • 薄めて使う: 必ず規定の倍率に希釈し、匂いを薄めてから使用します。
  • 散布の時間帯を工夫する: 虫の活動が少ない夕方以降に散布し、表面が乾いてから朝を迎えるようにすると効果的です。
  • 土に混ぜ込む: 散布後に軽く土と混ぜる(中耕する)ことで、表面の匂いを抑えることができます。

これらの対策を講じることで、虫が寄ってくるリスクを大幅に減らすことが可能です。

畑の益虫は大切なパートナー

コバエなどは厄介ですが、畑にいる全ての虫が悪者というわけではありません。アブラムシを食べてくれるテントウムシや、害虫を捕食するクモなど、作物を守ってくれる「益虫」もたくさんいます。殺虫剤を使う際は、これらの益虫に影響が少ないものを選ぶなど、畑全体の生態系を考える視点も大切です。

(参照:LOVEGREEN「[益虫]家庭菜園やガーデニングの味方になる虫11選」)

納豆菌の畑のデメリットと上手な活用法

この記事では、納豆菌を畑で利用する際の様々な側面について解説してきました。最後に、納豆菌の畑利用に関するデメリットを再確認し、それを踏まえた上で上手に活用するためのポイントをまとめます。

  • 納豆菌は土壌改良や連作障害の軽減に大きな効果が期待できる
  • 一方で過剰使用は土壌の微生物バランスを崩すデメリットがある
  • 使用頻度は月に1〜2回を目安とし、量と濃度を守ることが重要
  • 手作りの納豆菌液肥は腐敗することがあり、悪臭やカビで見分ける
  • 腐敗した液肥の使用は土壌に悪影響を及ぼすため絶対に避ける
  • 納豆を土に埋める際は少量ずつ、植え付けの2週間前が目安
  • 納豆菌は幅広い植物に有効だが、最初は様子を見ながら試すのが良い
  • 納豆菌自体にアブラムシなどを直接駆除する殺虫効果はない
  • 植物が健康になることで、間接的に病害虫に強くなる効果はある
  • 発酵臭によりコバエなどの虫が寄ってくる可能性がある
  • 虫対策には、完熟させてから薄めて使う、夕方に散布するなどが有効
  • 納豆菌は万能薬ではなく、あくまで土壌環境を整える補助資材と理解する
  • 殺菌剤との併用は避け、使用間隔を空ける必要がある
  • メリットとデメリットを正しく理解し、適切に管理することが成功のカギ
  • 最終的には、自分の畑の土や作物をよく観察し、最適な使い方を見つけることが大切

納豆菌は、化学的な資材に頼らず、自然の力を活かして豊かな土壌を作るための強力なツールです。デメリットを正しく理解し、賢く付き合っていくことで、あなたの家庭菜園や農業はより持続可能で実り豊かなものになるでしょう。

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