安納芋の栽培に挑戦していると、「安納芋の収穫日数は一体どのくらいが目安なのだろう?」という疑問が浮かびますよね。シルクスイートや鳴門金時の収穫日数とは違うのか、もし収穫が早すぎると甘くないままなのか、心配になる方も多いでしょう。安納芋の栽培は難しいというイメージがあるかもしれませんが、収穫時期を葉っぱの状態で判断するコツを知れば、失敗は大きく減らせます。この記事では、収穫した後に寝かせる理由や、具体的に何日干せばいいのか、そして安納芋はいつまで収穫できるのか、といった収穫に関するあらゆる疑問を、より深く掘り下げて解決します。正しい収穫日数とタイミングの知識を身につけて、蜜のように甘い安納芋の収穫を目指しましょう。
この記事で分かること
- 安納芋の収穫日数の具体的な目安
- 収穫タイミングを見極める葉や茎の状態
- 収穫後に甘さを最大限に引き出す熟成方法
- 他の人気サツマイモ品種との収穫時期の違い
安納芋の収穫日数の目安と判断基準
- 植え付けからの基本的な収穫日数
- 収穫時期は葉っぱの色で判断する
- 収穫が早すぎるとどうなるのか
- 比較|鳴門金時の収穫日数
- 比較|シルクスイートの収穫日数
植え付けからの基本的な収穫日数
安納芋の収穫時期は、苗を植え付けてからおよそ120日~150日後が目安です。これは4ヶ月から5ヶ月に相当する期間で、サツマイモが土の中でじっくりと栄養を蓄え、大きく成長するために必要な時間となります。
ただし、この日数はあくまで標準的なものであり、栽培環境によって大きく変動します。例えば、生育期間中の日照時間や平均気温を合計した「積算温度」が芋の肥大に大きく影響します。一般的に、サツマイモの生育には2200~2500℃の積算温度が必要といわれており、猛暑の年などは生育が早まり、目安の日数より早く収穫適期を迎えることもあります。
また、栽培方法の違いも収穫日数に影響を与えます。地温を上昇させ生育を促進する黒いビニールシート(マルチ)を使用する「マルチ栽培」では、生育初期の地温が確保され、雑草や乾燥も防げるため、生育が早まる傾向があります。その結果、120日程度で収穫できる場合も少なくありません。一方で、マルチを使用しない伝統的な「無マルチ栽培」では、生育が比較的ゆっくり進むため、収穫までに150日ほどかかることもあります。
収穫日数のポイント深掘り
- 基本の目安:植え付け後120日~150日(約4~5ヶ月)
- 気候要因:夏の気温が高い年は生育が早まる傾向。
- 栽培方法による変動:マルチ栽培は日数を短縮し、無マルチ栽培は日数が長くなる傾向がある。
- 地域の気候:九州などの温暖な地域では生育が早く、東北などの寒冷地では生育がゆっくりになる。
このように、単にカレンダーの日数を数えるだけでなく、その年の気候やご自身の栽培方法を考慮し、他の判断基準と合わせて総合的に収穫時期を見極めることが、美味しい安納芋を育てるための最初の鍵となります。
収穫時期は葉っぱの色で判断する

栽培日数の計算と並行して必ず確認したいのが、地上部の葉や茎が発する収穫サインです。植物は正直なもので、土の中の状態を地上部の姿で教えてくれます。サツマイモは、地中の芋が十分に肥大し、でんぷんの蓄積が完了に近づくと、光合成を行う葉への栄養供給を徐々に減らしていきます。この変化が、私たちにとっての収穫の合図となるのです。
最も分かりやすいサインは、葉の色が生き生きとした緑色から、黄色へと変化し始めることです。特に、株元に近い下の葉から枯れ始めたり、黄色く変色したりしてきたら、土の中の芋に栄養が十分に転流した証拠と考えてよいでしょう。葉だけでなく、ツル(茎)全体が勢いを失い、ツヤがなくなって緑色が薄くなってきた場合も、収穫が近いことを示す重要なサインです。
「試し掘り」で確信を得る!
葉の色が変わり始めたら、いよいよ最終確認の「試し掘り」です。すべての株を掘り起こす前に、まずは生育が良さそうな株を1~2株選び、芋を傷つけないように株元から少し離れた場所にスコップを入れ、周囲の土を優しく取り除いてみましょう。掘り出した芋の大きさや形、数を見て、満足のいくサイズに育っているかを確認します。もし、まだ小さいと感じるようであれば、無理に収穫する必要はありません。芋を傷つけないようにそっと土を戻し、さらに1~2週間ほど待つことで、芋はさらに大きく成長します。このひと手間が、収穫の満足度を大きく左右します。
日数の計算という「理論」と、葉の状態の観察という「実践」、そして試し掘りによる「最終確認」。この3つのステップを踏むことで、収穫の失敗を格段に減らすことができるでしょう。

収穫が早すぎるとどうなるのか

「少し小さいかもしれないけど、早く食べてみたい」という気持ちから収穫を急いでしまうと、安納芋が持つ本来の美味しさやポテンシャルを、残念ながら十分に引き出せない結果につながります。
収穫が早すぎた場合の主なデメリットは、収量と品質の両面に現れます。
芋が十分に大きくならず、収量が減る
サツマイモの芋は、生育期間の終盤、特に最後の1ヶ月で急速に大きくなります。この最も重要な肥大期を待たずに収穫してしまうと、芋の一つ一つが小さくなり、結果として全体の収穫量が大幅に減少してしまいます。場合によっては、本来期待できる収量の7割から8割程度しか確保できないこともあります。
でんぷんの蓄積が不十分で、甘みが薄い
安納芋の最大の特徴である、ねっとりとした濃厚な甘さ。これは芋にたっぷりと蓄えられたでんぷんが、収穫後の追熟によって糖に変わることで生まれます。収穫が早いということは、その原料となるでんぷんの蓄積量が絶対的に少ない状態を意味します。そのため、いくら丁寧に追熟させても、期待したほどの甘さにはならず、どこか物足りない、粉っぽい食感になってしまうのです。
収穫が遅すぎても品質低下のリスクがある
逆に「大きくしたい」という思いから収穫を遅らせすぎることにも注意が必要です。収穫適期を大幅に過ぎると、芋が大きくなりすぎて大味になるだけでなく、形が崩れて表面に亀裂が入ったり、内部に「す」と呼ばれる空洞ができたりして品質が低下します。また、土の中に長く置くほど、コガネムシの幼虫などの病害虫による食害リスクも高まります。何事も「適期」を見極めるバランス感覚が大切です。
適切なタイミングで収穫することが、量・質ともに満足のいく結果を得るための絶対条件です。

比較|鳴門金時の収穫日数

サツマイモには多種多様な品種があり、それぞれに最適な収穫時期があります。ここで、西日本を中心に絶大な人気を誇るブランド芋「鳴門金時」と比較してみましょう。
「鳴門金時」とは、品種名「高系14号」のうち、徳島県の鳴門市、徳島市、板野郡などで栽培されたものを指すブランド名です。(参照:JA全農とくしま)
鳴門金時は、安納芋に比べて芋の肥大が早い早生品種に分類され、収穫の最盛期は9月から10月とやや早めです。植え付けからは110日~140日程度で収穫期を迎えることが多く、比較的短い期間で収穫サイズに達するのが大きな特徴です。食感も安納芋の「ねっとり系」とは対照的に、上品な甘さと栗のような「ホクホク系」の食感が楽しめます。
品種 | 主な収穫時期 | 植え付けからの日数目安 | 食感の系統 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
安納芋 | 9月下旬~12月上旬 | 120日~150日 | ねっとり系 | 生育はやや遅め。追熟で甘みが最大限に引き出される。 |
鳴門金時 | 9月~10月 | 110日~140日 | ホクホク系 | 肥大が早く、早期に収穫できるブランド芋。 |
このように、品種ごとの特性を深く理解することで、ご自身の好みや作付け計画に合わせた品種選びが可能になります。
比較|シルクスイートの収穫日数
続いて、その名の通りシルクのような滑らかな食感と甘さで、近年急速に人気を高めている「シルクスイート」の収穫日数を見てみましょう。
シルクスイートは2012年に登録された比較的新しい品種で、安納芋や鳴門金時とはまた違った魅力を持っています。収穫時期はおおよそ9月下旬頃からと安納芋と近いですが、栽培される地域によって差が大きく、12月頃まで収穫されることもあります。植え付けから120日程度が収穫の目安とされている点も安納芋と共通しています。
最大の特徴は、収穫後の追熟による食感の変化です。収穫直後はやや粉質でホクホクとした食感ですが、貯蔵・追熟させることで、水分が増して驚くほど滑らかでしっとりとした食感へと変化します。この変化を楽しめるのもシルクスイートならではの魅力です。
品種 | 主な収穫時期 | 植え付けからの日数目安 | 食感の系統 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
安納芋 | 9月下旬~12月上旬 | 120日~150日 | ねっとり系 | 追熟が甘さを引き出す鍵。濃厚な甘みが特徴。 |
シルクスイート | 9月下旬~12月 | 120日~ | しっとり・なめらか系 | 追熟で食感が劇的に変化する。上品な甘さ。 |
品種ごとに最適な収穫タイミングだけでなく、収穫後の扱い方によってもその魅力が大きく変わる点を理解しておくことが、サツマイモ栽培をより楽しむためのポイントです。
安納芋の収穫日数より重要な熟成方法
- 収穫直後は甘くないって本当?
- 甘さを引き出すには寝かせることが重要
- 収穫後に何日干せばいいのか
- 安納芋の栽培は難しいのか
- 安納芋はいつまで収穫できる?
収穫直後は甘くないって本当?

この問いに対する答えは、明確に「本当です」。収穫したばかりのツヤツヤした安納芋をすぐに調理して食べると、多くの方がその味に驚くかもしれません。期待したような蜜があふれる濃厚な甘さはなく、むしろ少しパサパサとした食感で、どこか物足りなさを感じるはずです。
その理由は、芋の内部に蓄えられている成分の違いにあります。収穫直後の安納芋の内部は、甘みの元となる「糖」はごくわずかで、そのほとんどが「でんぷん」の状態で蓄えられています。このでんぷんは、人間が甘みとして感じることができない炭水化物です。焼き芋にしても、でんぷんが加熱によって糊化(こか)するだけなので、ホクホクはしますが、甘さはほとんどありません。
掘りたてをすぐに味わいたいその気持ち、痛いほどよく分かります。しかし、安納芋の真のポテンシャルを解放するためには、収穫後に「魔法の時間」を与えることが絶対に欠かせません。そのひと手間が、ただの芋を極上のスイーツへと昇華させるのです。
つまり、収穫は栽培のゴールであると同時に、最高の甘さを引き出すための「熟成」という新たなプロセスのスタートラインに立った瞬間なのです。
甘さを引き出すには寝かせることが重要

収穫直後のでんぷん質のかたまりから、とろけるような蜜の甘さを引き出す魔法のプロセス。それが「追熟(ついじゅく)」、つまり適切な環境で一定期間寝かせることです。
サツマイモは収穫された後も呼吸を続ける「生きた野菜」です。貯蔵されている間に、自身の内部に持つβ-アミラーゼという糖化酵素が活発に働き始めます。この酵素が、甘くないでんぷんを、甘みの強い麦芽糖(マルトース)へと分解していくのです。この「糖化」と呼ばれる化学変化こそが、安納芋が劇的に甘くなるメカニズムです。
この追熟を成功させるためには、サツマイモにとって快適な環境を整えることが何よりも重要です。農林水産省の指針によると、サツマイモの貯蔵に適した条件は温度13℃、湿度90%程度とされています。(出典:農林水産省「さつまいもを長期保存するにはどうしたらよいですか。」)
追熟成功の3つのカギ
- 温度:13℃~15℃程度が最適。10℃以下になると低温障害を起こし、傷みや腐敗の原因になります。冷蔵庫での保存は厳禁です。
- 湿度:85%~90%程度が理想。乾燥を防ぐため、新聞紙で1本ずつ優しく包むのが効果的です。
- 期間:最低でも2週間、理想を言えば1ヶ月以上寝かせることで、でんぷんの糖化が十分に進み、甘みが格段に増します。
ご家庭では、新聞紙で包んだ芋を段ボール箱に入れ、暖房や直射日光の影響を受けない涼しい室内(冬場の床下収納や、北側の廊下など)で保管するのが簡単でおすすめの方法です。
収穫後に何日干せばいいのか
本格的な追熟を始める前に、収穫直後に行うべき非常に重要な工程があります。それが「乾燥」です。専門的には「キュアリング処理」とも呼ばれますが、ご家庭では表面を乾かすだけでも十分な効果があります。
収穫したばかりの安納芋は、土中の水分をたっぷりと含んでおり、掘り出す際にどうしても表面に細かな擦り傷がついてしまいます。この傷口をそのままにして貯蔵を始めると、そこから雑菌が侵入し、腐敗やカビの原因となってしまいます。
そこで、収穫後はまず、風通しの良い日陰で芋の表面をしっかりと乾かす作業を行います。具体的には、収穫したその日に、畑の上やガレージのコンクリートの上などに新聞紙を敷き、芋同士が重ならないように広げ、数時間から半日、長い場合は1日程度、表面の土が完全に乾くまで置いておきます。この乾燥プロセスにより、芋の表面にある傷口部分にコルク層(人間の皮膚でいう「かさぶた」のようなもの)が形成され、傷口が自己修復されます。これにより、病原菌の侵入を防ぎ、長期保存に耐えられる強い状態になるのです。
雨の日の収穫は厳禁!天気の確認は必須
サツマイモの収穫は、必ず晴天が2~3日続いた後の、土がカラッと乾いている日を狙って行いましょう。雨の日や雨上がりの湿った土で収穫すると、芋に余分な水分が多く含まれるだけでなく、土壌中の雑菌が多く付着するため、乾燥させにくく、貯蔵中に非常に腐りやすくなってしまいます。収穫日を決める際は、週間天気予報をしっかり確認することが美味しいサツマイモへの第一歩です。
この収穫直後のわずかなひと手間が、1ヶ月以上にわたる追熟期間の成否を分け、美味しい安納芋を長く楽しむための重要な秘訣となります。
安納芋の栽培は難しいのか
「安納芋は特別だから、栽培も難しいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、結論から言えば、他のサツマイモ品種と比べて栽培方法が大きく異なるわけではなく、いくつかのポイントを押さえれば家庭菜園でも十分に成功できます。
安納芋はもともと種子島の在来種に由来する古い品種です。そのため、近年の研究で改良された収量性や形状の均一性に優れた品種と比べると、芋の大きさが不揃いになりやすいという、やや野趣あふれる特徴があります。しかし、この点を理解し、栽培方法を工夫することで、質の良い芋をたくさん収穫することが可能です。
美味しく育てるための栽培のコツ
- しっかりした苗を選ぶ:全ての作物の基本ですが、病害虫がなく、茎が太く節間が詰まった元気な苗を選ぶことが成功の第一歩です。
- 「水平植え」を実践する:苗を土に深く突き刺す「垂直植え」ではなく、舟の底のように浅く水平に植え付ける「水平植え(舟底植え)」がおすすめです。これにより、苗の各節から均等に根が張り、芋の数が多く、サイズも揃いやすくなります。
- 肥料、特に窒素分を控える:サツマイモは痩せた土地でも育つ強い作物です。土壌に窒素分が多すぎると、葉やツルばかりが過剰に茂り、肝心の芋が大きくならない「つるぼけ」という現象を引き起こします。元肥は控えめにし、特に窒素肥料のやりすぎには注意しましょう。
また、安納芋には表皮が赤紫色の「安納紅」と、白っぽい黄褐色の「安納こがね」の2種類があります。栽培方法に大きな違いはありませんが、食べ比べてみるのも面白いでしょう。
これらのポイントを押さえれば、家庭菜園でも十分に甘くて美味しい安納芋の栽培に挑戦できます。
安納芋はいつまで収穫できる?
安納芋の収穫期間は、植え付け時期や栽培地域によって幅がありますが、一般的には9月下旬から始まり、霜が降りる前の12月上旬頃までがシーズンとなります。
サツマイモ栽培において、収穫の最終リミットを決定づける最も重要な要素が「霜」です。サツマイモは熱帯性の植物に由来するため寒さに非常に弱く、一度でも霜に当たると地上部の葉やツルが枯れるだけでなく、地中の芋の細胞内の水分が凍って組織が破壊されてしまいます。霜の被害を受けた芋は、貯蔵性が著しく低下し、すぐに傷んで腐敗してしまうため、商品価値がなくなります。
そのため、天気予報で最低気温をこまめにチェックし、お住まいの地域で初霜が観測される平均的な時期を把握し、それより前に全ての収穫を完了させる必要があります。
地域別の収穫終盤の目安
- 九州などの温暖地:11月下旬~12月上旬
- 関東などの中間地:11月上旬~11月中旬
- 東北などの寒冷地:10月中旬~10月下旬(初霜が早いため、収穫期間が短い点に注意)
例えば、5月中旬に苗を植え付けた場合、120日が経過する10月中旬頃から収穫適期に入ります。そこから初霜の時期までが、収穫可能な期間となります。ご自身の地域の気候に合わせて、余裕を持った収穫計画を立てることが、大切に育てた安納芋を無駄にしないための鉄則です。
安納芋の収穫日数は総合的に判断
- 安納芋の収穫日数は植え付け後120日から150日が目安
- マルチ栽培の有無で日数は変動する
- 収穫のサインは葉が黄色く変化し始めた頃
- 試し掘りで芋の大きさを確認するのが確実
- 収穫が早すぎると芋が小さく甘みも不足する
- 収穫が遅れると芋が変形し品質が落ちることがある
- 鳴門金時は9月から10月が収穫の最盛期
- シルクスイートは9月下旬からと収穫期間が広い
- 収穫直後の安納芋はでんぷん質で甘くない
- 甘さを引き出すには追熟が不可欠
- 追熟によりでんぷんが糖に変わる
- 適切な追熟温度は13度から15度
- 収穫後は晴れた日に数時間干して表面を乾かす
- 霜が降りる前に収穫を終える必要がある
- 日数だけでなく葉の色や天候を見て総合的に判断しよう