家庭菜園で人気のニンニクですが、「植え付けたいけど、もう11月…今からでは遅いかな?」と悩んでいませんか。ニンニク栽培の一般的な植え付け時期を逃してしまうと、本当にちゃんと育つのか心配になりますよね。スーパーで見かける食用のニンニクをそのまま植えることはできるのか、すでに芽が出たにんにくはどう扱えば良いのか、という疑問も多いです。また、遅植えするとどうなるのか、冬の厳しい寒さに当てるとどうなるのかといった不安から、挑戦をためらっている方もいるかもしれません。しかし、ニンニクを大きく育てるには、時期だけでなく栽培のコツを知ることが重要です。この記事では、にんにくの植え付けが11月で遅いと感じているあなたのために、失敗しない育て方のポイントを詳しく、そして深く掘り下げて解説します。
この記事で分かること
- 11月のニンニク植え付けが収穫可能かが分かる
- 遅植えによる影響と具体的な対策が理解できる
- 大きなニンニクを収穫するための育て方のコツ
- 初心者でも失敗しないための土作りや注意点
にんにくの植え付けは11月だと遅い?基本知識
- 最適な植え付け時期と地域ごとの違い
- スーパーのニンニクはそのまま植える?
- 芽が出たにんにくの植え方と注意点
- 失敗しないための土作りと元肥のコツ
- 植え付けの基本的な深さと向き
最適な植え付け時期と地域ごとの違い

ニンニク栽培を成功へと導くための最初の、そして最も重要なステップは、適切な時期に植え付けることです。ニンニクは、その生育サイクルにおいて涼しい気候を好み、日本の多くの地域では秋に植え付け、厳しい冬を土の中で越し、春に再び成長して初夏に収穫するという流れが一般的です。このサイクルを理解することが、立派なニンニクを育てるための基礎となります。
結論から申し上げますと、お住まいの地域によって最適な時期は変動しますが、11月という時期は、関東以西の中間地や比較的温暖な暖地においては、十分に栽培が可能な許容範囲内と言えます。ただし、冬の到来が早い北海道や東北などの寒冷地では、根が十分に張る前に土が凍結してしまうリスクがあるため、少々遅いタイミングと判断されます。
なぜ植え付け時期がこれほど重要なのでしょうか。その理由は、ニンニクが冬を越すための「準備期間」にあります。ニンニクは冬の本格的な寒さが訪れる前に、土の中でしっかりと根を張り巡らせ、地上部にも数枚の葉を展開しておく必要があります。この初期生育によって蓄えられたエネルギーが、厳しい冬を耐え抜き、春からの爆発的な成長を支える基盤となるのです。根張りが不十分なまま越冬すると、株が弱ってしまい、春になっても生育が停滞し、結果的に小さな球しか収穫できなくなってしまいます。一方で、気候がまだ暖かい時期に植え付けを急ぎすぎると、高温多湿によって種球が土中で腐敗したり、病原菌に侵されたりするリスクが高まってしまいます。
これらの理由から、地域ごとの気候に合わせた植え付けが推奨されています。具体的な目安は以下の表を参考にしてください。
地域区分 | 主な地域 | 植え付け適期 | 栽培上のポイント |
---|---|---|---|
寒冷地 | 北海道、東北地方 | 9月下旬~10月上旬 | 冬の凍結前に根をしっかり張らせるため、早めの植え付けが重要。積雪は保温効果となり、株を守る役割も果たします。 |
中間地 | 関東、東海、関西など | 10月中旬~10月下旬 | 最も標準的な栽培スケジュール。残暑が厳しい場合は少し遅らせるなど、その年の気候に応じて調整します。 |
暖地 | 四国、九州地方 | 10月下旬~11月上旬 | 高温による種球の腐敗を避けるため、涼しくなってから植え付けます。冬も比較的温暖なため、生育はゆっくりと続きます。 |
ポイント
この表はあくまで一般的な目安です。同じ地域内でも、標高が高い山間部と沿岸部の平野部では気温の推移が大きく異なります。より正確なタイミングを計るためには、地温が20℃前後に安定した頃合いを見計らって植え付けるのが最も理想的です。地温計があると便利ですが、ない場合は、朝晩の冷え込みが定着し、日中の暑さが和らいだ秋本番の気候を目安にすると良いでしょう。
スーパーのニンニクはそのまま植える?

「家庭菜園を始めたいけれど、わざわざ種球を買いに行くのは少し手間…」そんな時、キッチンの常備野菜であるスーパーの食用ニンニクが目に留まるかもしれません。この手軽なニンニクを植えても育つのか、という疑問は多くの方が抱くことでしょう。結論として、スーパーで販売されている食用のニンニクを植えても、問題なく栽培し、収穫することができます。
では、園芸店などで販売されている「種球用」のニンニクと、スーパーに並ぶ「食用」のニンニクでは、一体何が違うのでしょうか。その最も大きな違いは、病害虫のリスクを低減させるための「消毒処理」の有無です。種球として販売されているものは、植え付け後の病気の発生を抑えるために専門的な消毒が施されており、健全な生育が期待できるという大きなメリットがあります。しかし、食用のニンニクにも、それを補って余りある魅力があります。
スーパーのニンニクを使うメリット
最大の魅力は、その圧倒的な手軽さとコストパフォーマンスです。家庭菜園は「思い立ったが吉日」。わざわざ園芸店に足を運ばなくても、いつもの買い物ついでに栽培をスタートできます。また、一般的に種球よりも安価で手に入るため、初めてニンニク栽培に挑戦する方や、少しだけ育ててみたいという方にとっては、心理的なハードルも経済的な負担も低い、非常に優れた選択肢となります。
知っておきたいデメリットと注意点
ただし、食用のニンニクを種球として利用する際には、いくつか知っておくべき注意点があります。最も重要なのは、発芽しない可能性があることです。特に、安価な外国産のニンニクの中には、輸送中の発芽を防ぐために、発芽抑制剤が使用されていたり、放射線処理が施されていたりする場合があります。そのため、農林水産省のウェブサイトでも言及されているように、国産のニンニクを選ぶ方が発芽の成功率は格段に高まります。
注意点
- 病気のリスク:前述の通り、消毒処理がされていないため、土壌中の病原菌に感染するリスクが種球用よりも高まります。健全な土作りを心がけることがより重要になります。
- 発芽の不確実性:全てが確実に発芽するとは限りません。予定している栽培数よりも少し多めの鱗片を植え付けておくことで、発芽しなかった場合の欠株リスクを補うことができます。
栽培の確実性や病気への強さを最優先するなら種球用がベストですが、「まずは気軽に試してみたい」という気持ちを大切にするなら、スーパーのニンニクから始めてみるのは素晴らしい第一歩ですよ!

芽が出たにんにくの植え方と注意点
キッチンの片隅で保管していたニンニクが、いつの間にか鮮やかな緑色の芽を伸ばしているのを発見した経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。食材としては少し風味が落ちてしまいますが、家庭菜園においては、これは絶好のチャンスです。この生命力あふれる芽が出たニンニクも、もちろんそのまま植え付けに利用できます。
むしろ、すでに発芽プロセスが始まっているため、土に植えてからの発芽を待つ時間を短縮できるという大きなメリットがあります。いわば、スタートラインを一歩リードした状態から栽培を始められるのです。ただし、その植え方には、デリケートな状態であるからこその配慮が必要です。
最も重要なポイントは、これから成長の主役となる芽と、生命線を支える根を絶対に傷つけないように、最大限の注意を払って優しく扱うことです。通常のニンニクを植える感覚で扱うと、伸びた芽が折れたり、鱗片の底からわずかに出始めた白い根がちぎれたりする可能性があります。これらの部分は非常に繊細なため、一度損傷すると再生が難しく、その後の生育に深刻な影響を及ぼしかねません。
植え方のポイント
- 丁寧な分割:まず、ニンニクの球を鱗片に分ける際、芽や根を傷つけないようにゆっくりと丁寧に剥がします。
- 大きめの植え穴:通常の植え付けよりも一回り大きい、深さ5cm~7cm程度の穴を掘ります。これにより、芽や根が穴の壁に擦れることなく、そっと置くためのスペースを確保します。
- 正しい向きで設置:芽がまっすぐ上を向き、根が自然に下りるように、穴の中に優しく設置します。
- ふんわりと覆土:周囲の土をふんわりと被せ、芽が隠れるくらいまで覆います。この時、上から強く押さえつけるのは禁物です。土の重みで芽を傷つけないよう、ごく軽く鎮圧する程度に留めましょう。
すでに光合成と根からの吸水を始めている状態ですので、土が乾燥している場合は、植え付け後にたっぷりと水を与えてください。これにより、根が新しい土壌環境にスムーズに活着し、ストレスなく成長を再開するのを力強くサポートします。
失敗しないための土作りと元肥のコツ

大きく、風味豊かなニンニクを育てるためには、その生涯を支える舞台となる土作りが決定的に重要です。ニンニクは特定の土壌環境を強く好むため、植え付け前にその条件をしっかりと整えてあげることが、栽培成功率を飛躍的に高める鍵となります。

ニンニク栽培において最も注意すべきは、土壌の酸度(pH)です。ニンニクは酸性の土壌を極端に嫌い、生育が著しく悪化します。理想的なのは、pH5.5~6.0程度の弱酸性の土壌です。日本の土壌は降雨の影響で自然と酸性に傾きやすいため、多くの場合、事前のアルカリ資材による中和作業が必須となります。
理想的な土壌環境を整えるための具体的な手順は、以下の2ステップです。
1. 酸度調整(植え付けの2週間前)
まず、畑の土壌酸度を調整します。ホームセンターなどで手に入る酸度測定液で測るのが確実ですが、分からない場合は一般的な日本の畑と仮定して作業を進めます。畑全体に苦土石灰(くどせっかい)を1平方メートルあたり100g~150g(一握り半~二握り程度)を均一に撒き、クワやスコップで深さ20cm~30cmほどをしっかりと耕し、土とよく混ぜ合わせます。苦土石灰は、酸度を中和するだけでなく、植物の光合成に不可欠なマグネシウムも補給できる優れた資材です。この作業は、石灰が土と馴染む時間が必要なため、必ず植え付けの2週間前までには終わらせておきましょう。

2. 堆肥と元肥の投入(植え付けの1週間前)
次に、ニンニクが健全に育つための栄養と、水はけ・水持ちの良い物理的な環境を整えます。牛ふんや馬ふんなどを原料とした完熟堆肥を1平方メートルあたり約2kg(バケツ1杯程度)投入します。堆肥は土壌中の微生物を活性化させ、土をふかふかの団粒構造にする効果があります。同時に、植え付け直後から根が吸収できる初期栄養として、元肥(もとごえ)を施します。窒素・リン酸・カリがバランス良く配合された化成肥料(例:N-P-Kが8-8-8のもの)を1平方メートルあたり100g程度加え、再び深く耕します。これにより、栄養たっぷりで物理性にも優れた、ニンニクにとって最高のベッドが完成します。


プランター栽培の場合
プランターで手軽に栽培する場合は、市販の「野菜用培養土」を利用するのが最も簡単で確実です。これらの培養土は、あらかじめ最適な酸度や肥料バランスに調整されているため、開封してそのまま使用できます。ニンニクは根を深く張るため、プランターは深さが20cm以上あるものを選ぶことが、大きく育てるための重要なポイントです。
この丁寧な土作りという「ひと手間」が、8ヶ月後の収穫時の喜びを何倍にも大きくしてくれるのです。

植え付けの基本的な深さと向き

完璧な土作りが完了すれば、いよいよ栽培の主役であるニンニクの植え付けです。このシンプルな作業の中に、その後の生育を大きく左右する重要なポイントが2つ隠されています。それは、ニンニクを植える「向き」と「深さ」です。これを正しく行うことで、ニンニクはスムーズに芽を出し、効率的に成長することができます。
まず、植え付けるニンニクの鱗片を一つ手に取り、じっくりと観察してみてください。片方はシュッと尖っており、もう片方は少し平らでざらざらしているのが分かるはずです。この尖っている先端部分から、やがて緑色の芽が力強く伸びてきます。そして、平らな底の部分から、土中の養分を吸収するための根が伸びていきます。
正しい向きと深さ
- 向き:植え付けの際は、必ず、尖っている方を真上に向けて土に置きます。もし逆さまに植えてしまうと、芽は重力に逆らってUターンし、地上に出るまでに膨大なエネルギーを消耗してしまいます。その結果、発芽が大幅に遅れたり、最悪の場合、地上に出られずに枯れてしまったりすることもあります。
- 深さ:一般的に、鱗片の先端(尖った部分)が土の表面から3cm~5cm程度の深さにくるように植え付けます。深すぎるとなかなか芽が出ず、浅すぎると冬の霜柱で持ち上げられたり、乾燥の被害を受けやすくなったりします。特に11月の遅植えの場合は、地温の低下の影響を和らげるため、やや深めの5cm程度に植えるのがおすすめです。
植え付けのイメージ
指で穴を開けるなら、人差し指の第一関節から第二関節くらいの深さを目安にすると良いでしょう。そこにニンニクの鱗片をそっと置き、周囲の土を優しく被せて軽く押さえます。
株と株の間隔(株間)は、球が十分に太るためのスペースを確保するため、15cm程度あけるのが理想的です。雑草の抑制、地温の保持、土の乾燥防止に絶大な効果を発揮する黒いビニールマルチの使用は、家庭菜園の労力を大幅に軽減してくれるので特におすすめです。マルチを使う場合は、植え付け後に風で飛ばされないよう、端をしっかりと土で押さえておきましょう。
にんにく植え付けが11月で遅い場合の育て方
- 遅植えするとどうなる?収穫への影響
- 冬の寒さに当てるとどうなるか解説
- ニンニクを大きく育てるには追肥が鍵
- トンネル栽培は遅植え対策に有効か
- 収穫時期の目安となるサイン
- まとめ:にんにく植え付けが11月で遅い時の要点
遅植えするとどうなる?収穫への影響
11月に植え付けを行う「遅植え」。適期を逃したことで、収穫にどのような影響が出るのかが最も懸念される点でしょう。先に結論を述べると、11月の植え付けでもニンニクを収穫することは全く問題なく可能です。しかし、最適な時期に植えたものと比較すると、収穫物の質や量にいくつかの特徴的な違いが現れることを理解しておく必要があります。
最も顕著な影響は、収穫できるニンニクの球が全体的に小さくなる傾向があるという点です。
この主な原因は、冬本番を迎えるまでの初期生育期間が短縮されることにあります。ニンニクは、厳しい冬の休眠期に入る前に、土の中で根を広く深く張り、地上部にも葉を数枚展開することで、春からの再成長に備えるという生育戦略を持っています。植え付けが遅れると、この重要な「準備期間」が短くなり、根の量が少なく、地上部の成長も不十分なまま冬に突入してしまいます。
その結果、春の訪れと共に他の株が勢いよく成長を再開する中で、準備不足だった株はスタートダッシュで遅れをとります。最終的に、球を大きく太らせる(肥大させる)ために必要な養分を十分に蓄積できず、小ぶりな収穫となってしまうのです。
遅植えで起こりやすいこと
- 球の小型化:最も一般的な影響です。収穫量は減りますが、家庭で消費するには十分なサイズが期待できます。
- 一球ニンニクの発生:ニンニクは通常、複数の片に分かれる「分球」という現象を起こします。しかし、生育エネルギーが不足するとこの分球がうまく進まず、まるで小さなタマネギのような一球のまま成熟することがあります。これは「ジャンボニンニク」とは異なるもので、希少価値はありますが、料理での使い勝手は通常のニンニクと異なります。
- 収穫時期の遅延:全体の生育プロセスが後ろ倒しになるため、通常の収穫時期(5月下旬~6月)よりも1~2週間ほど収穫が遅れる可能性があります。
しかし、これはあくまで一般的な傾向に過ぎません。後述する追肥のタイミングや量を工夫するなど、その後の栽培管理を丁寧に行うことで、このハンディキャップをある程度克服し、満足のいくサイズのニンニクを収穫することも十分に可能です。遅植えを悲観せず、愛情を込めて育てていきましょう。
冬の寒さに当てるとどうなるか解説
「冬の厳しい寒さは、植物の成長を妨げる過酷な環境」というイメージが一般的ですが、ニンニクにとっては、この越冬時の寒さが、実は豊作に欠かせない重要なスイッチの役割を果たしています。ニンニクは、一定期間の低温にさらされることで初めて、春からの本格的な成長と、子孫を残すための準備を始めるという、非常に興味深い性質を持っているのです。
この現象は専門的に「低温感応(ていおんかんのう)」または「春化(しゅんか、バーナリゼーション)」と呼ばれています。
もし、ニンニクが冬の寒さを全く経験せずに温暖な環境で育った場合、どうなるでしょうか。その場合、春になっても葉や茎ばかりが青々と茂り、本来エネルギーを集中させるべき地中の球がなかなか大きくなってくれません。特に、ニンニクの特徴である、複数の鱗片に分かれる「分球」というプロセスを正常に引き起こすためには、この冬の寒さによる刺激が絶対的に不可欠なのです。
寒さがもたらす重要なメリット
冬の寒さにしっかりと当たることで、ニンニクの体内では成長ホルモンのバランスが変化し、休眠状態が打破されます。そして、春の訪れと共に気温が上昇すると、「子孫(鱗片)を作る時が来た!」という信号が発せられ、活発な分球と球の肥大が開始されるのです。つまり、私たちが普段食べている、あの美味しいニンニクの形を作るためには、あえて厳しい寒さに当ててあげることが必要不可欠なのです。
ですから、冬の間、地上部の葉が少し霜で傷んだり、成長が完全に止まっているように見えても、全く心配する必要はありません。それはニンニクが枯れているのではなく、地中でじっと寒さに耐え、春の訪れと共に飛躍するためのエネルギーを静かに蓄えている証拠です。11月に植え付けた場合でも、これから訪れる冬の寒さを自然のままに経験させることが、大きな球を育てるための最も大切なプロセスの一つとなります。
ニンニクを大きく育てるには追肥が鍵

植え付けが11月と遅れてしまい、初期生育の期間が短くなってしまった場合でも、その後の栽培管理、とりわけ「追肥(ついひ)」を的確なタイミングと量で行うことで、生育の遅れを効果的に補い、満足のいく大きさのニンニクを育てることが可能です。ニンニクは植え付けから収穫まで約8ヶ月という長い期間を要するため、元肥だけでは途中で栄養が不足してしまいます。この「息切れ」を防ぎ、持続的な成長をサポートするための栄養補給が追肥です。
追肥を行う最適なタイミングは、ニンニクの生育ステージに合わせて主に2回あります。
1回目の追肥(12月頃)
植え付けから約1ヶ月が経過し、葉が3~4枚に成長した頃が最初の追肥のタイミングです。この時期の追肥は、これから迎える厳しい冬を乗り越えるための「体作り」を目的とします。しっかりと栄養を与えることで、株を充実させ、耐寒性を高める効果があります。株の周りに、窒素・リン酸・カリがバランスよく含まれた化成肥料を1平方メートルあたり30g(軽く一握り)程度パラパラと撒き、土の表面を軽くほぐして混ぜ合わせます。黒マルチを張っている場合は、マルチの上から株元に撒けば問題ありません。雨水や水やりによって肥料成分が溶け出し、根に届きます。
2回目の追肥(2月下旬~3月上旬)
冬の寒さが緩み、休眠から覚めたニンニクが再び活発に成長を始める早春に行います。この2回目の追肥は、収穫する球の大きさを直接左右する、最も重要な栄養補給です。この時期に供給された栄養が、ニンニクの球が本格的に大きくなる(肥大する)ためのエネルギー源となります。1回目と同様に、化成肥料を1平方メートルあたり30g程度施します。この「止め肥(とめごえ)」とも呼ばれる追肥を忘れないことが、大球収穫への分かれ道となります。
追肥の注意点
「大きくしたいから」と肥料を過剰に与えるのは逆効果です。特に窒素成分が多すぎると、葉ばかりが茂って球が太らなかったり、「春腐れ病」などの病気を誘発したりする原因になります。また、収穫が間近に迫った4月以降の追肥は、球の締まりを悪くし、貯蔵性を低下させるため、絶対に避けましょう。規定量を守り、適切な時期に施すことが何よりも大切です。
遅植えのハンデは、的確なタイミングでの栄養補給、つまり愛情のこもった「ごはん」でしっかりとカバーしてあげましょう!

トンネル栽培は遅植え対策に有効か
植え付けが11月と遅れた場合、冬の寒さが本格化するまでの短い期間に、少しでも初期生育を進めておきたい、と考えるのは自然なことです。そのための有効な手段の一つとして、畝(うね)をビニールシートなどでトンネル状に覆う「トンネル栽培」が挙げられます。
結論を先に述べると、トンネル栽培は日中の太陽熱を内部に蓄えることで地温を確保し、ニンニクの初期生育を促進する効果が期待できるため、遅植え対策として非常に有効な手段と言えます。
特に、冬の到来が早く、寒さが一段と厳しい寒冷地や、標高が高く夜間の冷え込みが激しい山間部で11月に植え付ける場合には、その効果は絶大です。トンネルによって冷たい風や霜から株を守り、地温を高く保つことで、根の活動を活発にし、春先のスムーズな成長再開を力強く後押しします。言わば、ニンニクにとっての「温室」を作ってあげるようなものです。
しかし、比較的温暖な関東以西の中間地の平野部や、冬でもほとんど霜が降りないような暖地においては、トンネル栽培は必ずしも必要ではありません。前述した通り、ニンニクの生育にはある程度の冬の寒さに当たることが不可欠です。常に暖かい環境で過保護に育ててしまうと、低温刺激が不足し、春になってもうまく分球しないなど、生育リズムが逆に乱れてしまう可能性も否定できません。
トンネル栽培を行う場合の重要なポイント
もしトンネル栽培を導入する場合、最も注意すべきは温度管理です。冬でも日差しが強い晴れた日には、トンネル内部の温度が急上昇し、30℃を超えることもあります。このような高温状態は、ニンニクにとって大きなストレスとなるため、日中はトンネルの裾を上げて空気を入れ替える「換気」作業が欠かせません。逆に、霜が降りるような寒い夜だけビニールを掛ける、といった使い方でも十分に保温効果は得られます。
お住まいの地域の気候特性や、その年の冬の厳しさを考慮して、トンネル栽培を取り入れるかどうかを柔軟に判断するのが良いでしょう。

収穫時期の目安となるサイン

秋に植え付け、長い冬を越し、春の成長期を経て、いよいよ約8ヶ月にわたる栽培の集大成である収穫の時期がやってきます。この収穫のタイミングを正確に見極めることは、ニンニクの品質、特に風味と保存性を最大限に高めるために非常に重要です。
収穫が早すぎると、球の肥大がまだ十分に進んでおらず、本来の大きさよりも小さなものしか収穫できません。逆に、収穫が遅すぎると、球を包んでいる外皮が破れ、中の鱗片がバラバラになってしまう「裂球(れっきゅう)」という現象が起こります。裂球したニンニクは、見た目が悪いだけでなく、傷口から雑菌が侵入しやすく、長期保存には全く向きません。
この最適な収穫タイミングを知らせてくれる最も分かりやすいサインは、地上部で茂っている葉の状態の変化です。
全体の葉のうち、下の葉から数えて半分から3分の2ほどが黄色く枯れてきたら、それが「収穫適期」の合図です。これは、葉で光合成によって作られた養分が、地中の球にすべて送り届けられ、球の成長が完了したことを示しています。葉が完全に枯れてしまうまで待つのは、収穫遅れになるので注意が必要です。判断に迷った場合は、試しに1~2株掘り上げてみて、球の太り具合や皮の締まり具合を直接確認するのが最も確実な方法です。
収穫日の天候は最重要!
収穫作業は、必ず晴天が2~3日以上続いた後の、土がカラカラに乾いている日を選んで行いましょう。雨上がりなどの土が湿った状態で収穫すると、球に泥が多く付着して作業性が悪いだけでなく、球自体が多くの水分を含んでいるため、乾燥に時間がかかり、保存中に腐敗する最大の原因となります。カラッと晴れた日の午前中に収穫するのがベストです。(参考:JA全農あおもり「営農情報」)
収穫する際は、株元をしっかりと掴み、根を傷つけないように真上にゆっくりと引き抜きます。収穫したニンニクは、根と茎を切り落とさずにそのまま畑に並べ、半日ほど天日で乾燥させます(これを「予備乾燥」と言います)。その後、数個ずつ束ねて、雨が当たらず風通しの良い軒下などに吊るして本乾燥させることで、数ヶ月間の長期保存が可能になります。
まとめ:にんにく植え付けが11月で遅い時の要点
- 11月の植え付けは適期より遅めだが収穫は十分に可能
- 寒冷地では遅いが中間地や暖地では栽培の範囲内
- 遅植えの影響で収穫する球は小ぶりになる傾向がある
- 分球が進まず一球ニンニクになることもある
- スーパーの食用ニンニクも植えられるが国産を選ぶのが無難
- 芽が出たニンニクは芽や根を傷つけないよう優しく植える
- 土作りでは苦土石灰で酸度を調整することが最も重要
- 植え付けは尖った方を上にし深さ5cm程度が基本
- 冬の寒さに当てることは分球を促すために不可欠なプロセス
- 生育の遅れは追肥でカバーできる
- 追肥は12月と2-3月の2回が基本で与えすぎに注意
- トンネル栽培は寒さが厳しい地域での遅植え対策に有効
- 花芽(とう)が出てきたら養分が取られないよう早めに摘み取る
- 葉の半分から3分の2が黄色く枯れたら収穫のサイン
- 収穫は晴れて土が乾いている日に行うのが長期保存のコツ