こんにちは。今日も田んぼと畑から、運営者の「あつし」です。
大根を育てようと思った時、一番悩むのが「大根の土作りと肥料」のやり方じゃないでしょうか。
せっかくなら、まっすぐでキレイな大根を収穫したいですよね。でも、土作りのタイミングや、石灰や堆肥の使い方がよく分からなかったり、肥料が多すぎて窒素過多になり、又根(またね)や裂根(れっこん)になったらどうしよう…と不安になることもあるかと思います。
私自身も家庭菜園で試行錯誤していますが、大根は本当に土で決まるなと実感しています。
この記事では、大根栽培で失敗しないための、基本的な土作りの手順と肥料の考え方について、私の経験も踏まえながらまとめてみました。
- 又根や裂根を防ぐ土作りの物理的なコツ
- 石灰や堆肥、元肥を入れる最適なタイミング
- 大根に適した肥料(N:P:Kバランス)の考え方
- 追肥の回数と窒素過多を避けるポイント
完璧な大根の土作りと肥料のやり方
大根栽培の成功は、種まきのずっと前から始まっています。美味しい大根は、根がストレスなく伸びていける「ふかふかの土」で作られます。そのためには、土の物理的な柔らかさ(物理性)と、適切な栄養バランス(化学性)の両方を整えてあげる必要がありますね。
ここでは、大根がまっすぐ育つための「土」の条件と、種まき前の具体的なスケジュールについて、詳しく見ていきましょう。
又根と裂根を防ぐ土作り

大根栽培で一番がっかりするのが、収穫した大根が二股に分かれている「又根(またね)」や、表面が縦にパックリ割れている「裂根(れっこん)」ですよね。
これらは天候のせいにも見えますが、実はそのほとんどが種まき前の土作りの段階で防げる失敗なんです。まずは、なぜこれらが起こるのか、メカニズムを知っておくことが大切です。
又根(岐根)のメカニズム
又根は、大根の先端(成長点)が地中で障害物にぶつかり、それ以上まっすぐ進めなくなった結果、根が「避けて」分かれてしまう現象です。その障害物には、主に3つのタイプがあります。
- 物理的な障害 土の中に、小石、木片、前作の野菜の根っこ(残渣)、ガラス片などが残っているケースです。また、スコップやクワで砕ききれなかった硬い土の塊(土塊)も、大根にとっては立派な障害物になります。トラクターなどで踏み固められた硬い層(耕盤)があると、そこで成長が止まり、又根になってしまいます。
- 化学的な障害 意外と見落としがちなのがコレです。土に入れた堆肥がまだ発酵途中(未熟)だと、土の中で分解が始まってガスが発生し、これが根の先端を傷つけて又根の原因になります。また、元肥として入れた化成肥料が均一に混ざっておらず、一箇所に固まっている(肥料だま)場合、その高濃度の肥料に根が触れると「肥料焼け」を起こし、それを避けるために根が分岐します。
- 生物的な障害 土の中にいる「ネコブセンチュウ」などの害虫が根に寄生し、コブを作ることでも又根(岐根)が発生します。これは連作障害の代表的な症状の一つですね。
裂根(根割れ)のメカニズム
裂根は、根の内部(木部)が急激に太ろうとする力に、外側の皮(表皮)の成長が追いつかず、物理的に引き裂かれてしまう現象です。
- 水分の急激な変化(最重要) これが最も多い原因です。生育初期〜中期に土がカラカラに乾燥した状態が続いた後、台風や夕立などで急に大雨が降ったり、一度に大量の水やりをしたりすると、大根が一気に水分を吸い込んで内部が急肥大し、裂根します。
- 肥料(窒素)の過剰 肥料、特に窒素(チッソ)成分が多すぎる場合や、生育の後半(根が太る時期)に肥料が効きすぎる(遅効きする)と、内部の細胞分裂が過剰に促進され、急激な肥大を招き、裂根しやすくなります。
- 収穫遅れ 食べ頃を過ぎて、畑に長く置きすぎても裂根の原因になります。十分成熟した大根がさらに肥大しようとするため、皮が耐えきれなくなるんですね。
これらの失敗を防ぐための基本対策を、テーブルにまとめておきますね。
| 形状不良 | 主な原因 | 対策(土作り・施肥) |
|---|---|---|
| 又根(岐根) | 物理的:石、土塊、耕盤 化学的:未熟堆肥、肥料の塊 生物的:ネコブセンチュウ | ・30cm以上深く耕し(深耕)、石や土塊を徹底除去 ・「完熟」堆肥を使い、元肥は土と均一に混ぜる ・連作を避ける(輪作する) |
| 裂根(根割れ) | 水分:乾燥後の急な大雨・水やり 肥料:窒素(チッソ)過多、遅効き その他:収穫遅れ | ・完熟堆肥を施用し、土の保水性・適湿性を保つ ・窒素肥料(特に追肥)をやりすぎない ・適期に収穫する |
土作りのスケジュールと深耕

大根の土作りは、他の葉物野菜や実物野菜(トマト、ナスなど)が「種まきの2週間前」から始めるのに対し、それより早い種まきの1ヶ月以上前から始めるのが理想です。
なぜそんなに早く始めるのか? それは、収穫対象である「根」が非常にデリケートだからです。入れたばかりの石灰や、分解途中の堆肥、高濃度の肥料が根に直接触れると、「肥料焼け」と呼ばれる肌荒れを起こしたり、生育障害の原因になったりします。葉や実を食べる野菜に比べ、大根はこのリスクが格段に高いんですね。
資材(石灰、堆肥、元肥)が土としっかり馴染み、化学反応が落ち着くための「待ち時間」が必要なんです。
理想的な土作りスケジュール(T-4週から)
私が目安にしているスケジュールはこんな感じです。
| タイミング | 作業内容 | 主な目的と注意点 |
|---|---|---|
| T-4週 (種まきの1ヶ月以上前) | 苦土石灰の施用・混合 | 土壌のpH調整、Ca/Mg補給。 (堆肥・肥料との同時投入は厳禁) |
| T-2週 (種まきの2週間前) | 完熟堆肥、元肥の施用 深耕・砕土、畝立て | 土壌の物理性改善、初期栄養の補給。 根の伸長領域の確保、排水性向上。 |
| T-1週 (種まきの1週間前) | (待機・馴染ませ期間) | 土と肥料を馴染ませ、ガス抜きや濃度障害のリスクを低減する。 |
| T-0週 | 種まき | 準備万端の土に種をまきます。 |
最重要作業:「深耕」と「砕土」
スケジュールの中でも、T-2週に行う「深耕(しんこう)」と「砕土(さいど)」は、大根の形を決定づける最も重要な物理的作業です。
- 深耕(しんこう) 大根は、耕されて柔らかくなった深さまでしか素直に伸びません。一般的な青首大根で根長30cm程度を確保するためには、その根が伸びるスペースとして、最低でも30cm、理想は40cmの深さまで、シャベルや備中クワでしっかり土を掘り起こす必要があります。これが「深耕」です。
- 砕土(さいど) 耕した土の塊を、クワなどで細かく砕く作業です。この時、土中から出てくる石、木片、ビニール片、前作の根などを徹底的に取り除きます。地味ですが、この石拾いを丁寧に行うことが、又根を防ぐ一番の近道ですね。
畝立ての高さと幅
深耕・砕土が終わったら、排水性を確保し、根が伸びる柔らかい土の層を厚くするために「畝(うね)」を作ります。
目安としては、高さ20cm~30cm、幅60cm~70cm(2条まきの場合)くらいです。
水はけが悪い畑(粘土質)の場合
私の畑もそうなんですが、水はけが悪い粘土質の土壌では、根腐れを防ぐために畝を通常より高く設定する「高畝(たかうね)」が有効です。高さ30cm以上を目安にすると、大雨が降った後でも根が水に浸かるリスクを減らせますよ。
苦土石灰をまくタイミング

では、各ステップをもう少し詳しく見ていきましょう。まずはスタート地点、種まきの1ヶ月前(最低でも2週間前)に行う「苦土石灰(くどせっかい)」の施用です。
なぜ石灰が必要か?(pH調整)
日本の畑は、どうしても雨(酸性雨)の影響で土が酸性に傾きがちです。多くの野菜には生育に適したpH(酸度)があり、大根の場合は弱酸性~中性(pH5.5~6.8程度)を好みます。
土が酸性に傾きすぎると、養分がうまく吸収できなくなったり、酸性土壌で活発になる病原菌(根こぶ病など)が出やすくなったりします。そこで、アルカリ性の石灰資材をまいて、土壌の酸度を大根が好む領域に矯正(中和)してあげるわけです。
なぜ「苦土」石灰を選ぶのか
石灰には「消石灰」「有機石灰(カキ殻など)」色々ありますが、私が家庭菜園で「苦土石灰」をよく使う理由は、1つで2役こなしてくれるからです。
- カルシウム(石灰):酸度を調整する
- マグネシウム(苦土):光合成に必須の栄養素(葉緑素の材料)を補給する
日本の土壌はマグネシウムも不足しがちなので、酸度調整とマグネシウム補給が同時にできる苦土石灰は、非常にバランスが良く効率的かなと思います。
施用量の目安は、1平方メートルあたり100g~150g(両手でひと握り~ふた握り程度)ですが、これは現在の土壌酸度によって大きく変わります。一度、市販の土壌酸度計(pHメーター)で測ってみるのが一番確実ですね。アルカリ性に傾きすぎても、今度は別の養分(鉄やマンガンなど)が吸えなくなるので、入れすぎは禁物です。
厳守!石灰と肥料の同時投入禁止
これは土作りの鉄則ですが、石灰資材と、堆肥や元肥(特にアンモニア態窒素を含む化成肥料)を絶対に同時にまいてはいけません。
なぜ同時投入がダメなのか?
アルカリ性の石灰と、窒素成分(アンモニア態窒素)が化学反応を起こし、窒素成分がアンモニアガスとして空気中に揮発(きはつ)してしまうからです。
せっかく入れた肥料の、一番大事な窒素成分が空気に逃げてしまうんですね。これでは肥料の効果が激減してしまいます。
だから、石灰をまいてから堆肥・元肥を入れるまで、最低1週間、理想は2週間の間隔を空ける必要があります。これが「1ヶ月前から準備」する大きな理由の一つです。

なぜ「完熟」堆肥が必要か

石灰をまいてから1〜2週間経ったら、いよいよ土壌改良の主役、堆肥の投入です(種まきの2週間前)。
堆肥の本当の役割:「団粒構造」
堆肥の役割は、窒素やリン酸といった肥料成分を補給することよりも、土の物理性を改善し「ふかふか」にすることがメインです。これが「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」の促進ですね。
団粒構造が発達した土は、小さな土の粒が集まって大きな塊(団粒)を作っているため、その隙間に水や空気が程よく保持されます。これにより、「排水性」と「保水性」という、一見矛盾する性質を両立させてくれるんです。
- 粘土質の重い土(うちみたいな): 団粒化で隙間ができ、排水性・通気性が向上します。
- 砂質のサラサラな土: 有機物がスポンジのように水分を保持し、保水性・保肥性が向上します。
まさに、裂根の原因となる「水分の急激な変化」を緩和(バッファリング)してくれる、大根栽培には欠かせない資材です。
施用量の目安は、1平方メートルあたり1kg~3kgくらいですね。
最大の注意点:「未熟」堆肥のリスク
ここで一番大事なのは、必ず「完熟(かんじゅく)」と表示された堆肥を使うことです。
もし発酵が終了していない「未熟な堆肥」や、生の牛ふん・鶏ふんなどを土に入れてしまうと、土の中で急激な分解(腐敗)が始まります。この時、アンモニアガスや有機酸が発生し、それが大根の繊細な根の先端に触れると…
- 生育障害や「肥料焼け」を起こす
- 根がそれを嫌がり「又根」になる
- 根の表面が荒れる「肌荒れ」の原因になる
といった最悪の事態を招きます。これは本当に怖いです。
必ず「完熟」の堆肥を選びましょう
自作の堆肥などで完熟度が不安な場合は、使用を避けるのが無難です。市販されている「完熟牛ふん堆肥」や「バーク堆肥」など、品質が保証された資材を使うのが一番安心ですね。
元肥のN:P:K比と化成肥料
元肥(もとごえ)は、種まき時に大根が元気にスタートダッシュを切るための初期栄養です。完熟堆肥と同じタイミング(T-2週)で施用し、深耕する際に一緒に土に混ぜ込みます。
元肥の施用方法:「全面全層施肥」
ここでのポイントは、肥料が一箇所に固まらないように均一にまくこと。先ほども触れた通り、肥料の塊(肥料だま)も、大根にとっては「障害物」となり、又根の原因になりますからね。
畝を作る場所だけでなく、畑全体にまいて(全面施肥)、深耕によって土の奥深くまで(全層施肥)しっかり混ぜ込む「全面全層施肥」が基本です。これにより、大根の根が伸びていく先々で効率よく栄養を吸収できます。
大根に最適なN:P:Kバランス
肥料の袋には必ず「N:P:K=8:8:8」のように、窒素・リン酸・カリウムの比率が書かれています。それぞれの役割は以下の通りです。
- N(窒素): 「葉肥(はごえ)」。葉や茎の成長を助けます。しかし、多すぎると葉ばかり茂り(葉ボケ)、裂根の主原因となります。
- P(リン酸): 「実肥(みごえ)」とも。根の発育や花の形成を促進します。特に初期の根の伸長に不可欠です。
- K(カリウム): 「根肥(ねごえ)」。根の肥大(デンプンの蓄積)を助け、病害虫や寒さへの抵抗力を高めます。
どの肥料を選ぶべきか?
一般的なバランス型である「N:P:K=8:8:8」の化成肥料(1平方メートルあたり100g~150g目安)でも十分育ちます。
もし大根に最適化するならば、(1)葉ボケや裂根を防ぐために窒素(N)は控えめに、(2)初期の根張りのためにリン酸(P)は多め、(3)後期の肥大のためにカリ(K)は多め、という設計が理想です。
「大根・にんじんの肥料」として市販されている専用肥料(例: N:P:K=5:10:5 や 6:10:8 など)は、この要求を満たす合理的な選択かなと思います。

失敗しない大根の土作りと肥料管理
完璧な土作りが終わっても、まだ油断はできません。大根は生育期間が長いため、途中で栄養補給(追肥)が必要です。ここでは、肥料のやり過ぎ(窒素過多)や、逆に肥料切れを防ぎ、最後まで健康に育てるための「管理」のコツを見ていきましょう。
追肥のタイミングと回数

元肥(初期栄養)だけでは、生育の後半(根が本格的に太る時期)に肥料が切れてしまいます。肥料切れを起こすと、根の肥大がストップしたり、株全体が衰弱して、べと病などの病気にかかりやすくなったりします。
そのため、生育のステージに合わせて「追肥(ついひ)」が必要になります。
追肥のタイミング(全2回)
追肥は、間引きのタイミングと合わせて全部で2回行うのが一般的です。
- 1回目: 2回目の間引きの後(本葉が5〜6枚くらいのころ) 株が本格的に成長を始める時期の栄養補給です。
- 2回目: 3回目の間引き(1本立ち)の後(本葉10〜15枚、根が太り始めるころ) 根がグングンと肥大していく、最も栄養が必要な時期の栄養補給です。
施用量は、各回とも化成肥料(N:P:K=8:8:8など)を1平方メートルあたり30g~50g(ひと握り程度)が目安です。やりすぎは禁物ですよ。
追肥・間引き・土寄せはワンセット
追肥は単独で行うより、「間引き」と「土寄せ」とセットで行うのが鉄板です。これらは独立した作業ではなく、一連の管理プロセスなんですね。
追肥と土寄せの連動プロセス
- 間引きをする → 残した株が不安定になり、根元がグラグラします。
- 追肥をする → 株の根元(株元)に直接かからないよう、株と株の間(条間)や畝の肩口にパラパラとまきます。葉や根に肥料が直接触れると「肥料焼け」の原因になるためです。
- 土寄せをする → 周囲の土を軽くクワなどで寄せ、間引きで不安定になった株元を固定します。
この一連の作業には、(1)株を安定させる、(2)追肥を土と軽く混ぜ合わせる、(3)肥料焼けを防ぐ、(4)大根の首が地上に露出しすぎて緑色になる(青首)のを防ぐ、(5)土をほぐして根に酸素を送る、といった複数の重要な目的があります。
窒素過多は裂根の原因
大根栽培では、肥料不足よりも肥料のやりすぎ、特に「窒素(N)過多」のほうが、取り返しのつかない深刻な失敗(=裂根)につながることが多いです。私もこれで何度か痛い目を見ています。
窒素過多が引き起こす2大トラブル
窒素が多すぎると、大根の体内で栄養バランスが崩れます。
- 葉ボケ(地上部の過繁茂) 窒素は「葉肥」なので、多すぎると地上部の葉ばかりがフサフサと異常に茂ってしまい、肝心の地下の根が太らなくなる「葉ボケ」状態になります。
- 裂根(根の割れ) 特に、根が太り始める生育後半に窒素が強く効きすぎると(これを「遅効き」と言います)、根の内部の細胞分裂が過剰に促進されます。この内部からの急激な肥大スピードに、外側の皮の成長が追いつけず、結果として根がパックリ割れてしまう「裂根」の最大の原因となります。(出典:タキイ種苗株式会社「タキイの園芸知恵袋」)
特に2回目の追肥のタイミングで窒素を効かせすぎると、この裂根のリスクが一気に高まります。追肥は「ちょっと足りないかな?」くらいを補うイメージで、規定量を厳守することが本当に大切ですね。
肥料焼けの症状と回避策
「肥料焼け」は、施用した肥料が濃すぎたり、未熟な堆肥を使ったりすることで、根が傷んでしまう現象です。
メカニズムとしては、土壌中の肥料濃度(塩類濃度)が急激に高くなることで、浸透圧の関係で、大根が根から水分を吸収できなくなる(むしろ水分を奪われる)ことで発生します。
症状としては、根の表面が荒れてザラザラになったり、シミができたり(品質低下)、ひどい場合は生育がピタリと止まってしまうこともあります。
肥料焼けの主な原因と回避策
肥料焼けは、施肥の「タイミング」と「方法」を守ることで防げます。
| 主な原因 | 回避策 |
|---|---|
| 原因1:未熟堆肥の使用 | 分解時に発生するガスや有機酸が根を傷める。 → 必ず「完熟」堆肥を使用する。 |
| 原因2:施肥直後の作付け | 元肥が土に馴染んでおらず、高濃度で根に触れる。 → 元肥は種まきの1~2週間前に施し、土に馴染ませる期間を設ける。 |
| 原因3:追肥が根や葉に直接触れる | 高濃度の肥料成分が直接触れて細胞を傷める。 → 追肥は株元から少し離してまき、「土寄せ」で軽く土と混ぜる。 |
| 原因4:水管理の不足 | 施肥後に水やりをしないと、肥料成分が根の周りに高濃度で留まる。 → 施肥後は適切に水やりを行い、肥料濃度を分散させる。 |
葉のサインで肥料不足を診断

生育の途中で「あれ、なんとなく元気ないな?」「葉の色が薄いかも?」と感じたら、それは肥料不足のサインかもしれません。人間の健康診断と同じで、葉の色や状態を観察することで、今何が足りないのかをある程度診断できます。
葉で見る栄養診断(主な目安)
- 窒素 (N) 欠乏のサイン: 葉全体が均一に黄色っぽく(淡緑色に)なります。特に古い葉(下葉)から症状が出やすいです。株全体の活力が低下し、生育が停滞します。肥料不足で株が衰弱すると、べと病などの病気にもかかりやすくなります。
- カリウム (K) 欠乏のサイン: 古い葉(下葉)の「縁(ふち)」の部分から黄色く変色が始まり、症状が進行すると、その黄変した部分がやがて褐色に枯れ込みます。
- マグネシウム (Mg) 欠乏のサイン: 古い葉の、葉脈と葉脈の間(葉肉の部分)が黄色くなります(葉脈の緑色は残る)。これは苦土石灰が不足している場合にも見られますね。
この診断はとても重要です。例えば、カリウム欠乏(葉の縁が枯れる)の症状が出ているにもかかわらず、「肥料不足だ!」と慌てて窒素(N)成分が多い肥料を追肥してしまうと、栄養バランスがさらに悪化し、裂根のリスクを高める逆効果を招く可能性があります。
葉の状態をよく観察して、何が足りないのかを見極めるのが大事ですね。迷ったらバランス型の化成肥料(8-8-8など)を少量施すのが無難かもしれません。
※これらはあくまで一般的な症状の目安です。実際の診断は、土壌の状態、pH、天候、前作の肥料残りなど、様々な要因が絡み合って発生します。ご心配な場合は、お近くのJA(農協)の指導員さんや、園芸店の専門家にご相談いただくのが最も確実です。
連作障害とアブラナ科の輪作
最後に、土作りと密接に関わる「連作障害(れんさくしょうがい)」についてです。これは特定の場所で同じ科の野菜を連続して作り続けることで発生する生育不良のことですね。
大根は「アブラナ科」
まず覚えておくべきことは、大根はアブラナ科の野菜である、という点です。
アブラナ科の仲間には、家庭菜園でも大人気の野菜がたくさんあります。
- キャベツ、白菜、ブロッコリー、カリフラワー
- カブ、小松菜、チンゲンサイ、水菜、ルッコラ など
連作障害の症状と対策
同じ場所でこれらのアブラナ科野菜を連続して栽培すると、土壌中の特定の病原菌(根こぶ病菌、根腐病菌など)や、特定のセンチュウ(ネコブセンチュウなど)の密度が異常に高まっていきます。
その結果、大根が深刻な病気にかかったり、センチュウの被害で根がコブだらけの又根になったりする「連作障害」が発生しやすくなります。
対策はシンプルで、「輪作(りんさく)」を実践することです。アブラナ科の野菜を栽培した場所では、最低でも1~2年はアブラナ科以外の作物(例:トマト、ナス、ピーマンなどのナス科/キュウリ、カボチャなどのウリ科/枝豆、インゲンなどのマメ科)を栽培するローテーションを組むことが重要です。
大根の土作りと肥料の総まとめ
最後に、これまでの「大根の土作りと肥料」の重要なポイントを、もう一度おさらいします。
大根栽培 成功の鍵
- 【物理性】「深耕(30cm以上)」と「砕土(石・土塊の徹底除去)」が又根を防ぐ最重要作業。
- 【スケジュール】種まきの「1ヶ月以上前」から準備開始。石灰(T-4週)と堆肥・元肥(T-2週)は必ず「1~2週間の間隔」を空ける。
- 【資材】堆肥は「完熟」品を絶対に使用する(未熟堆肥は厳禁)。石灰はCaとMgを同時補給できる「苦土石灰」がバランス良い。
- 【施肥】元肥は「均一に混ぜる」(肥料だま防止)。追肥は(特に生育後半の)「窒素過多」を厳禁し、裂根を防ぐ。
大根は「土作りが8割」と昔から言われるくらい、本当に種まき前の準備がすべてを決める野菜だなと、私も毎年実感しています。
少し手間はかかりますが、この最初のステップを丁寧に行い、ふかふかの土ベッドを準備してあげれば、きっと大根も応えてくれて、まっすぐで美味しい大根が収穫できると思います。
この記事が、あなたの大根の土作りと肥料選びの参考になれば嬉しいです!

